秘密の小屋創作掲示板

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僕はヒーローになりたい - 夢喰

2017/08/13 (Sun) 18:01:57

 ヒーロー。それは全ての男の子の夢だ。何であっても良い。他人に優る何かを持ち、あるいは何かで世界で唯一の存在となることだ。そうして、その何かが世の中に認められて、女の子にもて、男から羨望のまなざしを受ける。男の子はオトナになるまで、いや大人になってすらヒーローになる夢を持ち続けるものなのだ。それは中二どころか、もっと根源的な望みであり、小学生中学年以上の、月々能力が上がっていくのを実感する時期は極めて強くなる。だからこそ、ヒーローものの子供向け番組は小学生の圧倒的支持を受ける。
 一方、自ら体を鍛えることで、そのようなヒーローになろうと志すのは小学校高学年から中学だ。いや、ヒーローは無理でもクラスの平均以上にはなりたいと願って、体や特殊能力、例えばサバイバル知識とかを鍛える。その結果、遊びから次第に真面目な「部活」と変化する。それが中学に入る前後だ。かく言う僕も、皆が部活をやり始めてから、そういう気合いが入った。
 僕のコンプレックスは、他のクラスメートより体が細いこと。胸囲がクラスの平均より2cm以上も小さい。昔は早生まれだから、って思っていたけど、元々運動が苦手で、それで痩せているのは歳とともに分かる。早生まれの中だけで比較しても1cm以上小さいのだから。
 そんな弱いコンプレックスがあったけど、中学にあがってそれが一気に強くなった。他の小学校から来た子の体格が良いのだ。そういう目で同じ小学校から来たクラスメートをみると、こっちも良い。ずっと近くにいたから、友達の急成長に気付かなかったのだ。我が身を振り返ると、学ランは成長を見越して身長プラス10cmの細めのサイズを買ったけど、肩がぶかぶかで、いかにも貧弱だ。実際、春の身体測定では平均より3cmも小さかった。
 既に差がついているのに、クラスメートの男子の多くは運動部に入っている。これでは取り残されると焦った僕は、まず運動部を模索したけど、1年坊主は先輩の奴隷みたいなもので、ちょっと嫌だし、練習も僕には激しすぎる。挫折した僕は自己流で体を鍛えることにした。

1. 筋肉負荷ギブス:中学1年
 僕にあるのはマンガの知識。まず、星飛馬のように肉体改造ギブスを使うこと。星飛馬なんてお祖父ちゃんの世代のマンガだけど、やっぱりギブスは定番なんだよね。ただ手に入れようとネットを調べると「体に悪い」「児童虐待」と書かれていて、もちろん売っていない。でも代わりにマススーツなるものをみつけた。エキスパンダーみたいなものを上半身に張り巡らせるみたい。マススーツは値段が高いからお小遣いではとても変えないけど、要はエキスパンダーみたいなものを上半身に張り巡らせて場良いわけだ。星飛馬ギブスが悪いのは腕のところであって、大胸筋とかだと問題ないのだろうと勝手に納得した。
 エキスパンダーも値段が高いのでどうしようかと思ったけど、技術実習室の奥にしまってある昔のエンジンを見て、そこに使われているようなベルトなら良いと気付いたんだ。中古の分解品なら、近くの下町工場街にいっぱい捨ててあるし。
 水商売で忙しい母親は、何より生活費を稼ぐのに精一杯で、僕がベルトで何か工作しているのを見ても、何の干渉もしてこない。完成した手製の筋肉負荷ギブスを見ても、この種の健康問題を調べる余裕なぞないから
「体に悪いんじゃないの」
と少し心配しただけで、引き止めなかった。父親は何処にいるか知らない。生きているらしいけど、母親は全く話さないので、僕のほうから話題にすることもない。
 こうして始めた筋肉負荷ギプスだけど、まだ成長期だったのが悪かったのか、大胸筋や腹筋、肩、上腕の筋を傷め、更には肋骨や肩、二の腕の骨まで痛みを覚えるようになった。でも、それを「成長の為の筋肉痛」を思い込んだ僕は、丸1年、自宅にいる時だけでなく、体育等で学生服を脱がずに済む日もギブスの着用を続けた。
 その結果、中学2年春の身体検査で、僕の胸囲(チェスト)は成長するどころか昨年よりも細くなっていたことが判明した。他のクラスメートが軒並み3〜4cm胸囲が大きくなっているので、今ではその差が8cmに近い。きっとこれは体の密度が高まったお陰で、最後に笑うのは僕だと中二病の僕は信じていたが、体重が横ばいだったことから、校医に注目さたのが運の尽き。その後のレントゲン健康診断で、肋骨や肩の骨が変形していることが分かり、いろいろ問いつめられた結果、筋肉負荷ギプスのことがバレて、その禁止はもちろんのこと、上半身を使う運動までも禁止となってしまった。ギプス禁止になる予感があったから黙ってたのだけど母親経由で調べられたんじゃしょうがない。五月半ばのことだ。
 体重が落ちていたのは、筋肉負荷ギプスに胃を小さくする効果もあったからで、校医によると、食べ足りないのが原因で第二次性徴だというのに背があまり伸びていないとのこと。確かにクラス内の相対的な高さではチビに近くなったけど、今まで年に4〜5cmしか伸びていなかった背が、この1年間で6cm近く伸びたのだから、背が伸びていないってのは間違いだろう。そんな間違いをする校医なんて信じられない。僕はぷよぷよな体じゃなくて引き締まった体が欲しいんだい。そう思いつつ、僕は別の方法を考えることにした。

2. 蹴り訓練:中学2年
 上半身の運動がだめなら下半身。格好よいのは、もちろん蹴り技だ。有名なのは空手とキックボクシングだけ。どちらも腕との混合技だけど、蹴りだけでも強烈だ。ただ、中学校に部活はないから、動画やアニメなんかの見よう見まねの「自主トレ」になる。5月末に始めた。
 先ずは上半身に痛みが来ないように、体幹を動かさないタイプの蹴りを試してみる。とういうか、それが一番格好良くねえ? 上級者は体幹を動かさずに蹴るはずだ。始めのうちは、毎週のように次第に足がより上がるようになるのを感じ、1ヶ月もしない内に、頭の中で仮想模擬戦を始める。中2は何でも想像出来る歳なんだ。
 模擬戦となると、防御の動きも入ってきて、それはそれで新しい練習として刺激になる。蹴りの熟達が頭打ち気味だったので、ちょうど良い。上半身をあまり動かせない僕には、足を相手の太腿のまで届かせるのが精一杯だけど、脳内模擬戦では、相手の蹴りはこっちの腰まで届く。金的ももちろんありだ。それから逃れつつ相手を倒すからヒーローなんだ。しだいに脳内模擬戦の蹴りと回避の練習に熱中するようになって、もっと高く蹴り上げたいという欲求と、もっと鉄壁の防御が欲しいという欲求が高まった。
 前者は上半身を少し傾ける必要があるが、その際に体幹をまっすぐに維持しないと、肋骨に痛みを感ずるのが傷だ。今更認めたくはないけど、確かに取り返しのつかないところまで上半身の骨や筋肉を痛めてしまったらしい。だから、肋骨を固定すべく、サラシを頑丈に巻く事を考える。母親に言うと、簡単に賛成してくれて、古いシーツやカーテン、古着で作ってくれた。それを練習の時に巻くが、大抵は冷房の効いた部屋で汗をかかない程度の練習密度、つまり5分やっては長い休憩、10分やっては長い休憩という具合なので、
「また暫くしたら続けるかも」
と思いつつ風呂までサラシのしっぱなし、風呂を上がったあとも1回だけ練習して、そのあとは就眠までサラシのしっぱなしだ。
 後者、つまり鉄壁防御は膝をとっさに内股にクロスさせる練習のほか、空手上級者が使うという伝説(それが正しいかどうか知らないけど、誰かから借りたマンガで、そういうのが出ていたた)のタックというのを試してみる。ブリーフで股間を押さえつつ試すけど結構難しい。もっときっちり股間を押さえてくれるパンツがあったらなあ、とは思ったものの、そういうパンツをガードル呼ぶこと、そしてガードルというのはブラジャーと同じく大人の女性だけが使うものであることを知っていたので、さすがに母親には言えない。だから、持っているブリーフと水泳着だけで練習する。両者を組み合わせて、タック自体は出来るようなったけど、一回蹴るだけで外れるので、そのうち飽きて忘れてしまった。
 そんな具合で夏休みが過ぎて1学期になった。1学期は体育が長期見学になってしまったけど(体育で肋骨を今以上に傷めたら責任がどうのこうのと言っていた)、2学期は参加出来るものは参加したい。例えば、運動会のハードル走と徒歩だ。そこで運動服の下にサラシを巻いて参加した。蹴りの練習で、サラシが痛みを抑えることを知ったからだ。校医も運動の必要を認めたみたいで、跳び箱や鉄棒、バスケットボールみたいに上半身を使う競技以外ではサラシ着用での体育参加が認められた。
 
3. サラシ:中学2年後半
 冬服になって、学ランに袖を通したとき、改めてぶかぶかなのを痛感した。肩幅だけじゃなく、肋骨もだ。この半年、上半身は骨も筋肉もあまり変わらなかったらしい。まあ、半年で急に変化する筈もないが、校医の言った、筋肉負荷ギブスのせいで体が大きくならないってのはやっぱり信用ならない。これはむしろ体育が見学だから食欲がわかず、それで栄養が行き渡っていないと考えるべきじゃないのかな。食べる量がクラスメートより圧倒的に少ないのは事実で、当然胃も小さい。だから、僕は、サラシのせいで食欲が上がらないままだなんて知らなかった。夏休み以来毎日のサラシは、肋骨のサイズの回復(膨張)を押さえこんで、胃を小さくしたってのが真相らしいことは、後から知った。
 ともかくも、問題はこのブカブカ感だ。このままでは通学路で見かけるヤバそうな上級生に目を付けられかねない。昨年までは底までヤバい感じじゃなかったんだけど、今年はちょっと違うんだ。だから、せめて見た目だけでも筋肉もりもりの体のように見せるべく、さらしを肋骨全体を覆うように強めに巻いて、体を太めにみせる。学生服だから分からないはずだ。その際に、肩には母親のお古の服の肩パッドをいれて脇下からサラシで固定した。
運動してもほどけないぐらいの強さで巻くと、どうしても、一番細いところにサラシが集まる。この時初めて気がついたのだけど、僕の胴囲の一番細い場所は腰ではなくて、肋骨の一番下の部分だった。筋肉ギブスで肋骨が縮小したために内蔵が腹の方に押し出されて膨らんだのに比べて、肋骨が小さくなってしまったからだ。ともかく、肋骨に当たる部分を、全体が太くなるよう、若干逆三角形気味に巻いて行く。つまり、体の細いところは分厚く、比較的厚めのところは薄くサラシが巻かれるから、巻いた量に比例して、体の細めの部分、つまり肋骨の下半分が集中的に締め付けられる。あと、脇下もパッドを固定するためと逆三角形の体にする為に太めだ。
 始めのうちは、登校時と下校時だけ巻いていたが、朝の慌ただしい時に巻くのが面倒になって、直ぐに夜のうちに巻いて、朝そのまま制服を着て、そのまま夕方までサラシを巻いたまま過ごすようになった。友達も、僕の肋骨の健康問題に関する処置だろうと判断してスルーだ。唯一の脱着は体育で汗をかきすぎて交換しなければならない場合だけど、冬なのと、汗を大量にだすような運動が見学なのとで、そういう機会はほとんどない。そもそも、上半身に筋肉があまりないから、胸回りが暑くならず、汗もあまりかかないのだ。だから一日20時間、サラシを巻き続けた。
 筋肉ギプスの時ほどでは無くとも肋骨も胃も締め付けられて、女子以下の食欲しか出ないこともあって、僕の見た目の成長は遅いけど、中学に入った時と違って、僕には蹴り技があるし、アニメとかではそんな華奢な体で敵をなぎ倒すのが格好良いから、コンプレックスにはならない。中学3年の春の健康診断ではクラスメートより胸囲が10cm、身長が9cmも小さくなっていた。それでもここ5年で初めて女子の平均身長に追いついた訳だし、胸囲や体重も昨年や一昨年より太く重くなっているわけで、校医からは少なくともサラシに関して注意を受ける事はなかった。それが、実は諦められていた為だとはあとから知ったことだ。

4. 太鼓腹対策:中学2年後半
 サラシは皮下脂肪を押し出す。押し出された脂肪は、サラシが一番薄い場所に集まる。それは腹(サラシからはみ出ている部分)と乳首の高さだ。サラシで肋骨ごと締め付けられた内蔵も腹にあつまり、サラシをしている時は太鼓腹の肥満児みたいになってしまった。胸にも肥満児より少ない程度の膨らみが出来たものの、太鼓腹に比べてはるかに小さく、僕も母親もクラスメートも全く気付かなかった。
 太鼓腹自体はサラシを体格偽装のために厚めに巻くようになった日から気になっていたので、それを押さえる為に、わざと腹の下に本を敷いて腹這いに寝たりしてみたが(畳で寝ているので、下は十分に堅い)効果は薄い。やがて、以前タック用にと考えていたガードルが、まさにこういう太鼓腹のための補正下着ではないかと気がついた。ネットで調べると、一女性下着にはなっているけど、男でも履けそうなスパッツ状のシンプルなデザインがユニクロから1000円で出ている。
 意を決して母親に太鼓腹対策というか、上半身だけでなく腹部も固定するような服がないか相談すると、さすが水商売だけあって、自分の古着を出してきた
「さすがにこんなデザインはいやだ」
というと
「良かった、女装したい訳じゃないのね」
と独り言をいった(小声だけどギリギリ聞こえた)あとに
「心配しなくても男の子がはけるデザインがユニクロにあるから買ってくるわ」
とこっちの言いたい事を先回りして言ってくれた。
 こうして僕はガードルを履くようになったんだ。ただしスパッツ同様ブリーフの上で、学校には恥ずかしくて着れないので夕方と週末だけ。でも、太鼓腹が恥ずかしいのって着替えの時なんだよね。なので、皆に見られない方法を考えた末、ガードルの太腿部をブリーフの形に切って、ガードルの上からブリーフをはけば良いって気付いたんだ。股間を二重に押さえるから、夏に挫折したタックも可能だ。もっとも、蹴りの動きをするとタックが外れてしまうのが難点で、仮想模擬戦では、まずタックで相手の攻めをしのぎ、そのカウンターで蹴りだすスタイルが中心になった。複数の敵との戦いはまだ。
 そう、もうこの時は、カウンタースタイルを思いついて有頂天になり、そのまま、タックが必須だと思い込んでしまった。しかも今のタックでは通学で足を使うだけでも外れてしまう。練習すればどうにかなるだろうけど、もっと頑丈なタックの仕方も必要だと感じるようになってしまった。いろいろ試してみるけど上手く行かない。
 ネットをしらべると、どういうわけか
「女装」とか「女の子の股間」
という文字が目につく。なぜ女の子なのか理由がよくわからない。というのも、僕の知っている知識では、タマを守る為に隠すのであって、男の象徴の棒の方は前にでているからだ。ぜんぜん女の子の股間ではない。ただ、それでも「女の子の股間」というキーワードは僕ぐらいの歳の男の子には興味深いので、ついつい読んでしまう。なので、棒を表に出すことにこだわらなければ、タマを守るのは可能だとわかった。
 でも僕は格好良い男の子ヒーローになりたい訳で女装はごめんだ。そんな訳で、僕はブリーフ状にカットしたガードルとブリーフの重ね履きでのタックの練習に専念するようになった。もちろん当初の目的である太鼓腹対策としても少しは役立っている。本当に少しだけど。

5. サッカーでの事故:中学2年初冬
 そんな日々を過ごしているうちに、12月となり、体育はサッカーとなった。肋骨を傷めた僕でも出来る球技だが、体格も運動能力も劣る僕はフルバックぐらいしかポジションがない。だから滅多にボールには触れず、ボールを触るような機会は、サイドを越えてしまったボール拾いの時ぐらいだ。あとは試合の順番待ちでのパスの練習ぐらい。運動場に限りがあるので、パスの練習は花壇とか階段とかのある通学路一部でも行なう。というか僕みたいなみそっかすは、そういう障害物の多いところぐらいしか練習場所がない。
 その日、僕がパスの練習をしていると、試合フィールドからボールが飛んできた。滅多に無い「思い切り蹴り返す」機会だ。そこで蹴り返す事だけに専念しておれば良かったものを、ボールの高さが仮想模擬戦での敵のキックの位置だったもので、そっちの蹴りで蹴り返そうという欲がでて、見事にバランスを崩し、1メートルほど下の花壇の角に転倒した。なんとか頭は守ったものの、代わりに尻を激しく打ち、しかもその振動で、近くに立てかけてあった鉄骨(新しく作る準備だったらしい)が落下してきて、これまた尻を前の方から強打。ぎきっという音とともに激しい痛みに襲われた。
 無理に立ち上がろうとしたのが悪かったらしく、もう一度、鈍い音とともに激しい痛みに襲われて、そのまま僕が倒れ込んだ。立ち上がれない様子に、先ずはパートナー、次に近くでパスの練習をしていた人が僕の元に駆け寄って、それ教師に伝わって、もちろん授業は中断し、僕は救急車で運ばれた。
 診断の結果、骨盤に複数のヒビが入りって折れかけているとの事。その際に、ガードルを履いていることを医者と看護師に見られたのは黒歴史だ。しかもその後着替えの際にサラシと肩パッドを見られたことで、病院の関係者に僕が女性の(華奢な)体を望んでいる風に誤解されるのだけど、そのことは退院するまで知らなかった。それだけなら恥ずかしいで済むけれど、その時の誤解が手術の方法に影響してしまったって誰が想像でよう。
 治療に当たって医者は2つのオプションを示してきた。一つが人工骨で骨盤を支える手術で、もう一つは人工骨を使わずに、骨盤のヒビを時間をかけて修復させる方法。前者は頑丈で、かつ退院までの時間も短いけど、すこし金がかかる。ただし、今回は体育の授業が原因なので、健康保険の自己負担分は、学校の保険から全額補填される筈で、お金の心配はいらないとの事だ。前者のもう一つの欠点は、尻の見た目が今より大きくなるとのこと。それで、スタイルを気にする人は後者を選ぶらしい。
 チビで華奢な僕にスタイルは無理だ。ならば、早く日常生活に戻れる前者一択だ。そして、肝心の手術の際に、病院側の誤解が、僕の骨盤そのものを広げるような補強方法を選択させてしまったのだ。ようするに割れかけた部分を無理矢理押さえつけるのではなく、少しの空間があっても良いように、ひびの隙間にも骨素材を流しこんだのだ。そして、その外側を人工骨が覆うので、僕の尻は今までより大きくなってしまった。
 母親だけに知らされて僕は知らなかったけど、骨盤の人工骨は規格品で、僕に入れられたのは女性用だったらしく、そのためか骨盤の確度がかわって、何となく足が内股気味になっている。もっとも、手術直後でから激しい歩き方が出来なかったから、その意味でも足は内股気味になるわけで、その内股で骨盤の形が固定されてしまうとは想像もしなかったのだけど。
 ともかくも年末前に無事に退院して、正月は家で楽しめた。そして3学期。ズボンが股間に食い込むのだ。尻がデカくなって、ベルトの位置がずれ上がったのが原因で、ベルトを緩めにすれば元の高さに戻るものの、その位置だと人工骨盤の最上部に当たって、それを締める圧力が骨盤に響くのでヤバい。といって、ズボンが股間に食い込む状態は、尻にゆとりがなくて、前屈みしただけでズボンが破れそうだ。
 結局、格好指定のジャージで登校。掃除とかはそれでやって、始業式だけ持って行ったズボンに着替えたけど、その騒動で、担任にもクラスメートにも、僕の尻サイズが大きくなった事が知れ渡った。結局2サイズ大きなズボンを買う事になったのだけど、ベルトを締める位置が肋骨の上になってしまったで違和感がある。本来なら僕の少し弱まった肋骨をベルトのようなきついもので締めるのは良くないのだろうけど、サラシのお陰で痛みはないので、気にしない。

6. 回復期:中学2年1〜5月
 さて、3学期は再び体育禁止で、僕は体操服に着替える機会を失い、結果的に僕はガードルの太腿部を切らずに済むようになった。そして、ブリーフの代わりに、ブリーフ状に切ったガードルをその下に履くという二枚重ねになった。というのも、その方が尻の手術跡をしっかりと支えられるからだ。それは医者からのアドバスだ。普通の男性にはそのようなアドバイスをしないらしいが、事故時に既にガードルを履いていた僕は、普通にガードルを薦められてしまったという訳だ。ちなみに新しく買ったんはMサイズ。以前のSサイズでは尻を十分に押さえきれない為だけど、その分太腿部が全然締め付けられる、それはそれで履きやすい。
 そうして、2枚重ね始めるようになった気付いたのが2点。一つは太鼓腹を押さえる為にちょっと堅い円盤状のものを2枚のガードルの間に挟むと、効果的にお腹を押さえられること。それは仮想模擬戦でのお腹の防衛にも役に立つ。もう一つは、2枚重ねにすると、登下校ぐらいではタックが外れず、特に棒を前でなく下に隠したら、丸一日タックの状態を維持出来るって事だった。まだ蹴りの練習は始められないが、今のうちに太鼓腹隠しとタックをマスターするのも悪くない。ガードルがリハビリに使えるという医者のお墨付きを貰って、僕は女装っぽいタックに対してあまり拒否感を抱かなくなったわけだ。もちろん女装なんてする気はしない。ガードルはあくまで骨盤のサポーターだ。もっともお腹を押さえる為の堅い円盤は学校ではちょっと着用出来ないが。
 こうして股間を完全に隠すようになって数日後、雨上がりの水たまりが広がっていて、しかたなくズボンを裾がぬれないようにとベルトの位置を思い切り上げたで、下を見ながら水たまりを渡ったあとに気がついたのだ。股間に食い込んだズボンの前が、完全にフラットになっていることに。こんなのクラスメートに見られたら女装と思われてしまう。
 僕は女装じゃないと最近意識し始めたので、かえって女装に見えかねない部分が気になったのだ。だから、僕は股間に何かがあるように2枚重ねのガードルの合間に、固めのクッションを入れて、男の股間を作り出した。せっかくだからと、ちょっと大きめの男性器を偽装したのは僕の見栄だ。その結果、タックが今まで以上に固定された、同時に間違ってタック部に衝撃が加わった際の守りになったのは望外の副産物だ。もっとも、クッションは熱をためる素材で、睾丸の温度を更に上げてしまったけれど、そういう不快感も暫くすると消えてしまった。
 大きめの男性器を偽装すると、それをそれとなく見せびらかしたくなるものだ。だから、ズボンは常時一番高い位置でベルトを止める。そんな訳で、肋骨の下端ではなく、胃の真上ぐらいでベルトを締めるようになった。それが女の人の腰の括れでの位置である事を知ったのは、中学3年も夏服になった時で、その頃には、このベルトの位置以外は僕には考えられなくなっていた。たしかに掃除とかで上着を脱ぐ機会は1月からあったし、体育も3月には復帰したけど、掃除は男女別で異なる場所をローテーションしていた為に、腰の位置とか気にしない男子は気付かなかったのだ。いや、気付いていたかも知れないけど噂話とかにはしなかった。だから、夏服で女子に指摘されるまで分からなかったわけだ。
 体育の再開時は、僕はうっかりして太腿までのガードルで学校に行ってしまった。女装だという認識よりも、骨盤サポーターという認識が強かった為だけど、クラスメートの男子はガードルとは呼ばずに
「それって腰のサポーター?」
と質問形式の助け舟を出してくれた。どんなに僕が体育のみそっかすでも、けが人に優しいのは常識で、僕はそのまま、ガードルを常用するようになった。だから夏になってハーフパンツになってもガードルのままで、それがハーフパンツから見えていたものの、女子の見せパンと同じ扱いで、気にされることも無かった。
 そんな事をいているうちにも、骨盤は順調に回復し、骨の回復を促進する薬の効果もあって、かなり拡大した。人工骨の方は衝撃的な圧力には対抗するけど、成長のようなじわじわとして変化だと、それに合わせて位置が動く。そのため少しずつ人工骨の位置が少し高めとなって、大きいだけでなく深い尻になって行った。しかも太鼓腹対策の堅い円盤(丸形のまな板を使った)が骨盤を内側から広げていたのだから、医者の想定していたよりも大きな尻となってしまった。具体的には手術の段階でクラスの女子の一番尻の大きな子並みになっていたらしいのだけど、それが中学を卒業する頃には、高校3年生の美尻組の平均ぐらいになっていたらしい。でも、そんな超ゆっくりして変化に身近な人間が気がつく筈もない。しかもダブダブのズボンを一番高い位置でとめているから、尻の位置が少し上がったところでズボンに影響が出る訳もなく、手遅れになるまで僕も全く気付かなかった。

7. 骨を守る為に:中学3年
 そうこうしているうちに夏服の季節になった。通学路の怖い先輩がいなくなったので、サラシで筋肉もりもりを偽装する必要がなくなったものの、体育で体を動かす時に、サラシで締め付けておかないと肋骨が悲鳴をあげそうな気がして、サラシは夏服になっても続けた。それは肩パッドもそうで、肩の関節を衝撃から守るために、こちらも続けた。肩パッドは夏服初日は恥ずかしかったものの、肩を守るという理由が自然に受け入れられ、逆にこれを外すほうがおかしいという雰囲気になったので、そのままだ。ただ、あまりに太く肩を偽装するのも変なので、肩パッドそのものを細く短く変形させてしようしたから、結果的には肩を今まで以上に(それこそ万力で前後を圧縮するようなぐらいに)締め付ける事になってしまった。
 水泳の季節になった。昨年が見学だったので2年ぶりの水泳だ。困ったのが水泳着。締め付けが足りないのだ。骨盤に不安のある下半身はもとより、ずっとサラシで固定してきた上半身にも不安がある。でも水泳はしたい。というわけで、普通の水泳パンツ(脱げないように締め付けるボクサータイプ)だけでは不安で、体育の先生と校医に相談した。
「2枚重ねならどうにかなるとは思いますが、動きが制限されますよね」
という提案をすると、体育の先生からは、無理せずゆっくり泳げば大丈夫だ、とのお墨付きを貰い、更に肋骨対策として全身型はどうかという意見が校医から出た。全身型は値段が高く、しかも誰かに手伝ってもらわないと脱着出来ない。そこで出た妥協案が、女子用のセパレート水着だ。
「でも恥ずかしいよな?」
と体育の先生に言われた時、僕は、自分の履いているガードルの事を思い出して、女装の為でなく、骨を守る為の服がたまたま女性用の服だったことを、ここで恥ずがるのはおかしいという意地が沸いて
「そんなことありませんよ。必要なんだから。現に骨盤のためにガードルを履いているし」
と見栄を切っていまった。
 こうして僕は女子用水泳着を使う事になった。もっとも着替えの時に、女子用の水泳パンツのその下に男子用の水着を着ているのを見せているので、クラスメートも自然に受け入れてくれている。ただ、このころから、何となく、仲間同士で親しくするという距離感じゃなく、腫れ物にさわるような接し方をされ始めたように思う。
 女子用の水着はもう一つの隠れた懸念を解消してくれた。それは胸に集まった脂肪だ。肋骨をサラシで押さえつけ、ガードルで腹を押さえつけてはいるけど、じゃあ余った脂肪がなくなるかというとそうじゃない。一番締め付けの緩い場所と脂肪の集まりやすい場所に脂肪は集まる。そして、それは胸、特に乳首のまわりだ。裸で鏡を見ると、そこが他の場所に比べて盛り上がっているのが分かる。これが肋骨の太い普通の男子なら、大胸筋の一部の格好良さに繋がるのだけど、僕のように肋骨が女子より細く、脇下も女子並みしかないと、小学校5年生のおっぱいぐらいには見えるのだ。それを晒すのは恥ずかしく、今回みたいに別の理由で胸を隠す服を着れるのはホッとするのだ。着替えの時は、僕は壁を向いてやっていて、そんな僕に正面を向けなどという同級生はいないから問題ない。
 一学期が終わる頃、僕は女子用の水泳着にすっかり慣れていて、もはや女子用の水着以外を着るのが怖いほどになっていた。それは骨を守るという意味だけでなく、胸を隠すという意味でも。こうして、胸に対する恥じらいを知った僕は、胸の脂肪が完全に埋もれるように、他の部分のサラシをより分厚く巻くようになった。それが更に他の部分に脂肪を溜まりにくくして、その分胸に脂肪が集まるようになったけれど、そんな事は僕の知った事ではないのだ。
 それでいて、サラシに押し出された太鼓腹の部分は、それを無理矢理引っ込めようと、丸形のまな板で押さえ込んで、結果的に骨盤を内側から広げていたのだから、僕の行動は矛盾している。でもお腹って、なんだか引っ込めやすい弾力があって、ついついそうしてしまったのだ。
 女子用の水着に慣れた僕は、パンツ系、シャツ系であれば女性用の服を着る事にも免疫ができた。だから、夏休みに入る直前にTシャツやジーンズを買いに母親と出かけた時、男性用の服が横にダブダブで動きにくい事を知ったとき、試着室に母が持ってきた服(テナントだったので直ぐ近くに女性用もおいてあった)が、試着後女性用だと判明したあとも、気にならなかった。ただただ、自分一人で買いにはこれないよなあ、と思っただけだ。
 昨年は肋骨の療養と蹴りの練習の為に主に室内にいたけど、今年はもう少し外に出る機会が増えた。中学生とは好奇心の塊だからだ。そうなると、サラシは暑い。そして、昨年までのTシャツ類は丈が短く幅だけが広い。なので、早速買った女性用アウターを使う機会が増えた。同級生にばったり出会うこともあるけど、Tシャツとジーンズでは女物だと誰も思わないらしく、よしんばTシャツの前がゆったりしているのに気付いても、そっちの方が涼しいという事実にこれまた不審に思われなかった。だから、僕はこの時に僕のシルエットが中学3年女子よりも華奢な上半身と、その割に高校1年生なみの豊かな尻と女性的な括れ(しかも正しい位置)を持ったものであることにとうとう気付かずに夏を終えた。大人の女性のように性的魅力のあるシルエットではないから、そういう指摘を受けなかったのだ。
 夏が終わり、またしても学生服の季節になった。僕は肩の細さと狭さを改めて実感しつつも、ようやく上げられる等になった足で蹴りの練習を再開させた。そのとき気付いたのが、昨年より遥かに内股になっている事で、でも、そのお陰でタックが安定していることだ。内股は悪くない。考えてみればバレーボールでのレシーブなんか内股で構える。スポーツには悪くないはずなのだ。だから、僕は椅子に座っている時も意識して内股にしている。いや、骨盤が変形した関係で、自然に内股にはなっているのだけど、それをより自然に内股にしているのだ。内股で座れば、骨盤は更に広がって内股が自然な確度を作って行く。こうして中学卒業までに、僕の骨盤(正確には人工骨)は単に大きくなっただけでなく女性的な形になっていった。もちろん、僕がそんな事に気付く筈もなかった。

8. ボクはヒーロー:中学卒業
 僕は予想より早く成長期のピークを終えた。中学を卒業する際の身体検査では、クラスメートより胸囲が12cm、身長も11cm小さくなっていた。身長は女子の平均のままだけど、胸囲は女子より圧倒的に細く、肩幅や肋骨の下の方(腰の括れってやつ)も、女子の一番細い子と同じぐらいだ。足も内向きで股間はタックしている。成長期の食事の量が足りなかったせいか、あるいは股間をタックし続けたせいか(最後の1年は夜もタックしていた)、髭は無く明快な声変わりもない。それでもボーイソプラノではなく、ゆっくり声変わりをしたのだろう。その証拠にとっても小さいながらも喉に突起がある。見た目では分からないけど触れば確かに喉仏を感ずるのだ。
 そんな僕だけど、蹴りの練習をしている事は数人の同級生が知っている。僕の進むこうこうと別の高校に行く彼らが最後に僕にアドバイスしてくれた。
「まあ、背の低いことを気にすんな。最近じゃ、男の娘のように見えるけど、実は武芸の達人っていうヒーローが流行りなんだ。お前もそれを目指せよ」
 それは天啓だった。春休みにコスプレで武闘系の男の娘ってのを捜したら、あるはあるは。それもヒラヒラスカートとか女子制服とかそんな感じのコスプレで、僕はその格好で、下にスパッツを履いたまま、足技を披露した。
 でも僕は失念していたのだ。そのコスプレ会に、他の中学から同じ高校に進学する奴も来ている可能性を。そいつに名前と年齢を覚えられる可能性を。

 だから僕は高校では女装担当を務めている。始めはイベント(週末)ベースで、次第に日常的に。
 制服こそ男物だが、いつしかサラシの代わりにコルセットの類いや寄せブラを着るようになり、元々薄い体毛は完全に剃られ、髪も伸びっぱなしだ。
 なぜなら、それが面白くなってきているからだ。皆が僕を(コスプレでの)男の娘ヒーローと崇めるの様子に快感に覚えるからだ。もっともっと有名になる為には、女装が似合う今の体型を維持しなければならない。そして、その上で、おっぱいと尻をより魅惑的にできれば尚さらユニークだ。
 男はホルモンを使わずにどれだけ女性に近づけるのか? ホルモンを使わずにどれだけ他人を騙せるのか。そんな挑戦は何となく格好良い! どんなに皆が僕を
「将来性転換して女の子になる
違いない」
と信じていようとも。そして、僕の蹴りを、武術というより
「ラインダンスみたい」
と囃していようとも。


とりあえず終わり(高校編は類似の話が沢山ありそうなので、当面棚上げです)

幽鬼の転生譚(本編:5) - 偽筆屋

2017/08/11 (Fri) 22:26:07

先ずは例の確認です。微量の精が私に入ってきたときに、その精の元にたどり着くと、私と関係なしに単純に女装をして興奮しています。本来なら、私が初心者幽霊だった頃に会った女装連中と同様、私に精が入る筈がないのです。もしかして、女装のきっかけが私だったから、私の事を忘れてしまった状態での女装でも、それで興奮したら精が僅かに入ってくるのかも知れません。

これはサンプルをもっと増やして確認したいものです。現実世界で女性服を買ってくれる男が必要ですが、キモい女装は見てて嫌ですし、できれば女装に抵抗の少なそうな男の子のほうが効率が良いでしょう。だから、顔はともかく体格的に女装できそうな若い子のうち長髪の男の子を捜して誘惑します。華奢な体格のくせに髪の毛を伸ばしているような子であれば、女装の素質がある可能性が高いと思ったからです。精を吸い尽くすことが目的ではないので、条件にさえ見合えば誰でも構いませんし、罪悪感もありません、

あとは今まで華奢系のターゲットで試したことを繰り返すだけです。レベルが上がった事で、幻覚や夢での現実感が強くなり、ネットショップの購入待ちの状態まで誘導出来るようになっています。つまり、目が覚めたあと、記憶と現実を混同していたら、そのまま私の為の下着と思って購入手続きを済ませる可能性が高くなったのです。ネットショップは一度でも行なえば、敷居は低くなります。案の定、新しいターゲット達の半数は、この後も私の為の服や下着を買ってくれるようになりました。

彼らが現実に買った女性下着類を、私の誘導の元に着用させる、最後に別れるということを繰り返して、ターゲットのサンプルは20人近くとなっています。そうなると、確かに彼らが単純に女装で興奮している時に、射精の0.1%未満の精しか入ってこないようでした。

そういう検証の傍ら、私はリンクが切れて夢に入れなくなった男達のアパートや家を訪れました。すると、その半数は新しいパートナーを見つけています。残りの半分は一夜限りの契りかも知りません。そう思ってソープを調べると、私の元ターゲットで来ている男がいます。でも、彼との精的リンクは切れていません。どうやら、女の方からの好意がないといけないようで、それは納得するのですが、それでは消えた半分はどうなっているのだろうか、と思ってみてみると、いずれも衰弱の気配があり、しかも何故か近づけません。どうやら、別の幽霊、私には見えない幽霊が取り憑いているようです。可哀想に、私が理性で離れても、彼らは精を搾り取られる運命だったようです。

気になっていた2件が分かって、もう輪廻の輪に戻っても良いなと思った頃合いに、またも奇妙な精の入り方をする体験をしました。最低限単位の精、それこそ精子数個程度に相当する精が連続的に私の元に入って来るのです。24時間で換算すると、普通の男が毎日生み出す精力の3000分の1に対応する精が、私の元に入ってきているようです。しかも、それは必ずしも連続的でなく、始めのうちは数時間単位、日が経つにつれてより長時間単位で起こります。

これは非常に気になります。早速精のもとに近づくと、なんと彼は股間が全く消えてしまうような女装をしているではありませんか。それはもはや興奮の為の女装ではなく、女としてみられる為の女装です。あの女装プロの連中のやっているのと同じなのです。

睾丸を暖めすぎたり痛めつけたりしたら精子が死ぬことは、現代では良く知られています。それは「子孫を殺す」という行為であり、その分の精のうち、ごく一部が、女装のきっかけとなった私の元に来ているのです。考えてみれば当りまえです。

興味が出た私は、更にサンプルを増やす事にしました。この程度では、まだ鬼にはならない筈だからです。その結果、もともと女装を少しだけ始めていた男の子を女装にのめり込ませても精は入ってきませんが、女装に興味程度しかなかった男の子を女装趣味に目覚めさせると毎日の精力の10000分の1程度、ネカマしかしたことのない男の子だと毎日の精力の3000分の1程度、ノーマルに近い男の子で毎日の精力の1000分の1程度が入ってくる事がわかりました。

女装を毛嫌いしている子も調べたのですが、私が輪廻の輪に戻る前には分かりませんでした。というのも、私は緊急に輪廻の輪に戻らなければならないと感ずる事態が生じたからです。

それは2年の在世期限の2種間前の事でした。いきなり大量の精が入ってきたのです。人ひとりを2ヶ月かけて取り憑き殺して得る精の総量の半分程度といえば、その凄まじさが想像できるでしょう。その元となる人はまだ生きていて、彼の元に行って理由が分かりました。なんと、去勢手術(いわゆるタマ抜き)を受けていたのです。しかも彼は、私が
「貴方が女の子になってくれたらいいのに」
という夢を見せ続け、かつ別れる際にも
「女の子じゃないとこれ以上は一緒にいられない」
という夢を見せて別れたサンプルの一人です。
あまりにも可哀想になって、その夜は久々に具現化してあげました。そして、その時に気付いたのです。私の男性器が既に10歳児並みまで回復し、しかも勃起を始めてしまった事に。

目の前にいるのは、女性器こそないものの、完全な女装をしたニューハーフで、しかもどうやら女性ホルモンに手を出しているらしく、彼がブラジャーを脱いだあとに見える乳首が腫れ上がっています。

その時に直感したのが、ここで私が欲望に負けたら、鬼に堕ちてしまうだろうことです。必死に我慢して、慰める事だけに専念しましたが、今後理性が続くか自信がありません。彼(彼女)だけでなく、女装趣味が嵩じて去勢するかもしれない候補は他にもいます。

こうして、突如私は輪廻の輪に戻ることにしたのです。

ただ、最後に、私の得た吸精の秘密を、ターゲットの一人に夢の中で話聞かせることだけは忘れませんでした。知識とは、それを得てしまうと、誰かに話したくなるものだからです。そうする「知識に関する欲望まみれ」の行為が私を鬼に近づけるとしてでもです。私が無事に輪廻の輪に戻れたのは、本当にギリギリの幸運だったかも知れない。

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幽鬼の転生譚(止)

こうして主人公の幽霊が男への転生を遂げた。しかし因果応報とは良く言ったもので、彼は男の娘として育ち、結局童貞のまま一生をおえた。そして、その後何度輪廻転生しようとも、彼は二度と「マトモ」な男には転生できなかった。

夢で吸精の秘密を聞かされた男が、それをどうしたかについては、日記に書いた言われているが、その行方は分からない。ただし、何処かの幽霊がその日記を読んだのではないかという噂はある。それが草食男子や男の娘を更に流行させたのではないかとも言われている。真相は闇の中だ。

執筆 2017年8月
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幽鬼の転生譚(本編:4) - 偽筆屋

2017/08/10 (Thu) 19:20:27

精を集めたからといって今直ぐ輪廻の輪に戻る必要はありません。三回忌の法事(期限)までに戻れば良いのです。だから、それまで幽霊として滞在することにしました。というのも、幽霊としてのレベルが上がった結果、精を多くの人からす少しずつだけ吸い取ったらどうなるか興味が沸いたからです。興味、すなわち知的好奇心というのは、社会的秩序を守る為の「理性」と同じく「魂」の働きであって、初心者幽霊ならほとんど失っているものですが、精を十分に吸収したお陰で魂が強化されて、そのまま知的好奇心に繋がったようです。

こうなるとターゲットは誰でも良くなります。というのも、現代人は性交のほとんど純粋快楽の為に行なっていて、子づくりの為の性交ではないからです。中には子供を作らない前提の人もいます。ならば「子供はいらない」とか「結婚は面倒」とか公言している男をターゲットにすれば良いだけです。そんな男達のうち、性欲の強い人なら、「精を少しだけ吸い取った上で、幽霊の本能にあがなって離れる」ことができるか試しても構わないでしょう。

となれば、狙いは、子供を作らないと公言しているうち、ソープに訪れるような男です。接触して始めの2人には「素人相手は怖い」と逃げられましたが、3人は見事に引っかかりました。ただし、私も幽霊本能の暴走が怖いので、一夜限りの吸精で離れます。もっとも、これも対象を増やすうちに2晩、3晩と増やして行き、最終的には3週間ぐらい吸精を続けても、そのターゲットから離れられるようになりました。もちろん、その男だけにかかり切りではありません。同じ夜に複数の男の夢から異なる時刻に精を貪っています。

数をこなしたせいか、男達の中には服をプレゼントしようとする者もいました。幽霊である私は昼間具現化することは出来ないので、一緒の買い物は無理ですが、それでも一緒に買い物にいく夢は見せてあげられます。デートをしたいという男の欲望が夢に反映されたら、自然と買い物まで付き合ってね、とねだることになるからです。そして、その際に買うのは、私が既に持っている服(の気配)と同じものであり、そういう服を夢の中で店の中に陳列させる訳ですが、そんな夢をみた男達の一部は、私への秘密のプレゼントとして色々買ってくれる人も出てきます。もちろん買ってくれる人もいます。私のサイズは夢の中で伝えているし、私の着ている服(の気配)からサイズを推定だって出来るからです。中にはネットショップでエロい下着を買ってくる強者もいます。いかに婦人服や女性下着が男にとって敷居が高くとも、恋は盲目で、プレゼントの為なら買える。それが現実のようです。

彼らが買った日の夜には、夢の中で私に渡してきますから、その記憶は単純な夢として処理して、夢の中で玄関のチャイムを鳴らし、彼らが起きたあとは具現化して部屋に入ります。夢ではなく幻覚なのは、彼らに具体的な行動を起こさせるためです。そして、幽霊である私は実在物を持ち運び出来ないためです。具体的には、私がその場で開けるような幻覚を見せつつも、実際には彼が服を取り出して、そのまま、彼が普段使っていないような場所(たとえば押し入れの奥とか、箪笥の奥とか)にしまってもらいます。

それらの服を捨てないのは、もしかすると実物が後日必要になることがあるかも知れないと思ったからです。例えば下着だと、翌日に着用してくる事が期待されます。服だって何度か使えば選択する必要があるでしょう。いかに夢だけで済ませることは可能とはいえ、半同棲状態であれば洗濯物も出る訳で、それが全くないのは不審に思われるかもしれませんし、何より、別れたあとに服を残せば
「プレゼントはお返しします」
という拒絶のメッセージにもなるでしょう。

だから、下着の場合場、翌日も具現化して、彼に件の下着を彼のアパートの洗濯機の底に入れるように仕向けます。こうすれば、私の存在が夢でなかったと思うでしょう。服の場合は、別れる直前の洗濯に紛れ込むようにします。

だから、彼らとはすっぱり縁が切れたと思ったのですが、しばらしくして、ポツポツと精が入ってくる事があったのです。性交の夢の時の1%未満の微々たる量で、幽霊にとって全く意味をなさないのですが、それでも3度も起こると気になります。翌日、その精の持ち主の様子を見にいくと、私の為に買った服を取り出して、それに情欲しています。

でも、その程度の情欲では私に精は入ってきません。不思議に思って、何日か見張っていると、又も精が入ってきました。見ると、彼が女装して興奮しています。私に対する情欲が行き過ぎで、私が着た(と彼が思っている)服を身につけることで発散したようです、とんでもない変態さんで、生前の私には到底思いもよらなかった方法です。

でも、とにかく、新らしい形の吸精手段は見つかったのは確かで、そうなると、この女装興奮でどれだけ効率が上がるか気になります。でも女装はそれが似合う人でないと、いくら幽霊の私でも見る気になりませんし、醜い女装に至っては吐き気を催します。幸い、私のターゲットの中には、とても華奢で、女装コンテスト上位者や女装メイド喫茶の連中より女装が似合いそうな子も数人います。その中で、私に服をプレゼントして来た子もいたので、彼で試してみることにしました。

先ずは具現化して、幻覚で操作します。服は彼が買ってくれた奴で、彼が迫ってくる時に
「私、本当は女装した男の人の方が燃えるの」
「私がその服をきるから、貴方は私の服を着て下さらない?」
と彼に迫ります。華奢な男なので、サイズはギリギリ大丈夫です。そうして、くだんの服を仕舞っていた場所から彼に取り出させ、そのまま彼に着させます。その上で、幻覚上で性交したら、なんと、精の1割しか入ってきません。幽霊という非実在物より、服という実在物に精を奪われたからでしょう。いや、あるいは女装状態だったからか。

検証の為に、こんどは幻想上での女装を別の子で試します。夢で彼を私の部屋に連れ込み、そこでカレーとワインを盛大にこぼして彼の服を着られない状態にしました。夢ですから、下着までべちゃべちゃです。もちろんシャワーという流れになります。部屋には女物の服しかありませんし、乾燥機もないので、彼は、手洗いで大きな汚れを落とした上で、そのまま家に帰るという提案をしますが、
「パンツ系のあるから、それを着れば良いわ」
という言葉に納得して、服を洗濯機に放り込みます。

そして、パンツ系はサイズが小さすぎて入らないという流れになります。なので、夢の中の(彼の潜在意識が起こす)行動は、伸縮性のあるレギンスとゆったりしたチュニックを選びます。下着は、新品がそれしかない、という設定で、フリル付きのショーツを渡します。すると、もう、それを手にした段階で彼は興奮を始め、彼のショーツがテントを張っているのを私が凝視した(と夢の中で思わせる)だけで、夢精しました。その時に私に入ってきた精の量は、彼が失った精の量の1割程度。性交の夢ではないので、こちらでも確かに少なくなっています。

夢を続けます。だから、彼はその格好で家に帰らなければなりません。そうなると、完全な女装にしないと悪目立ちします。そういう事で(あくまで夢の中ですが)髪型を変え、化粧を施し、ブラジャーもしてもらいます。夢の中だから、サイズはどうとでもなるのです。そして、それら下着は、彼のものとなり、代わりに私は新品を買うようにおねだりします。もちろん、
「貴方、そっちの方が魅力的だわ」
と褒めるのも忘れません。
そうして、女装のままで私と一緒に彼のアパートに戻り、改めて男の服に着替えて、一緒に女物の下着を買いに行く流れで、彼に選んでもらった下着を買う流れです。その際、彼が恥ずかしさに何度も視線を外すうちに、同じデザインの異なるサイズを買うという設定を忘れません。下着の数が増えているのに彼が気付くのは財布としてお金を払う段で、そのまま私のアパートに着て、大きなサイズの下着を
「あれ、貴方とお揃いの下着にするから一緒に出かけたのよ」
と無理矢理言いくるめます。夢の中だから、コントロールは完璧で、そうして下着を着せ、更に、一旦持ち帰ってもらったレギンスとチュニックも、もう一度着てもらいます。その段階で、今日2度目の夢精となり、やはり彼が失った精の量の1割程度しか入ってこない事を確認します。

ここまで面倒な流れにしたのは、夢の記憶で婦人服売り場や、ネットの女性下着購入に慣れて、彼が女物の服や下着を現実でも買ってくれれば儲け物だと思ったからです。5人の華奢ターゲットのうちの3人までが、実際に私の為のネットで買ってくれるようになりました。幻覚状態でネットショッピングをさせることが出来れば、こんな面倒なことは必要ないのですが、私の見える範囲内でしか幻覚による直接的影響を及ぼす事が出来ず、いかにキーボードが目の前にあっても電話とカードがあっても、その向こう側へ影響を及ぼす事ができないのです。

現物が手に入った華奢ターゲット計4人から精を絞る際は、手を変え品を変え、彼に「実在する」私用の女性服を着させました。もちろん、事が終わったあとは洗濯機行きです。彼が正気に戻った時には、部屋に私用の服が干してあるという状態になるのです。その為か、私が彼から離れたあとも、彼らは時折女装するようになったのです。それは極僅かの量の精が彼らから入ってくることで分かりました。要するに、現実女装での性交の夢や、幻想上の女装で私を思ってのセックスなしの射精の夢は精の1割程度、現実女装でのセックスなしの射精だと精の1%程度が私に入ってくるようです。

もっとも、その後、彼らから、それまでの微量の精より更に少ない量(本来の0.1%未満)の精が入ってくる事がありました。これは検証しなければならないな、と思っているうちに、私はまたも幽霊としてのレベルが上がりました。男転生に必要な精が溜まってから約2ヶ月語のことです。

今回はレベル上昇では、幽霊としての破格な能力を得ました。それは、相手が私に接触しないでも、触りたいと思っただけで、私の方から相手に触る能力です。なんだか、パッシブな幽霊というより、アクティプな鬼に一歩踏み出した感じです。

いや、実際、私は狭間に近づいているのです。例えば、今まで退化しきっていた男性器が、3歳の幼児並みながらも復活し始めています。恐らく今のレベルは幽霊としての最高レベルで、次のレベルは「鬼」になるでしょう。そう直感が訴えています。鬼とは輪廻から踏み外した連中の作る世界で、一旦鬼の世界に踏み込んでしまったら、それこそお特の高いお坊さんや道士による祈祷がないと、二度と人の世界には戻れません。だから、幽霊や鬼のうち、男性器がはっきりあるのは鬼だけで、幽霊にはありません。その意味では確かに私は鬼に近づいているのです。

私は余り精を集めすぎてはいけないと悟りました。一番の安全策は、このまま輪廻の輪に戻って転生する事です。でも、射精の0.1%未満という微量の精が、それも勝手に入って来るのか気になります。これも、今の私には関係ない事とはいえ、気になります。知りたい事はもう一つあります。精を何度か吸っただけで別れた男達には、それでも精的リンクが残っていて、いつでも夢に入れるのですが、そのリンクが突然消えるようなことが数度あったのです。別れた順でも、精を吸う量が少なかった順でもありません。

だから、私は少し冒険することにしました。というのも、女装がらみだったら余り大量には精が入ってこないし、その程度の精の量なら、輪廻の輪に戻る期限(2ヶ月後)まで更なるレベルアップはないと思ったからです。よしんば大量に精が入っても、今までの経験から危険レベルは推定できているので、そこから自分自信の危険度もわかります。だから、レベルが上がる前に輪廻の輪に戻るのは難しくないでしょう。鬼にはならない筈です。そもそも、鬼になってしまうような連中は、鬼になる事を怖れていないのです。私は違います。
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幽鬼の転生譚(本編:3) - 偽筆屋

2017/08/09 (Wed) 21:40:30

痴漢男の初七日、私は自身の幽霊としてのレベルが再び上がったことを直感しました。試しに実体化してみると、影こそないものの、鏡に映ります。それは私の「誘惑姿」を修正するのに多いに役立ちました。なぜ胸部を締め付けて細くする必要があるのか、なぜ尻だけでなく太腿にも詰め物をしなければならないのか、どういう立ち方歩き方がもっとも女っぽいのか、女装メイドのプロ連中の話からだけでは分からないものなのです。

幸い、幽霊としての私の体の変形能力も上がっています。今までは縦横厚みそれぞれ一定の比率でしか変形出来ませんでしたが、今は異なる高さで異なる比率の変形が出来ます。肩の部分をより細く、尻の部分を太く、胸の直ぐしたを思い切り細くといった具合です。だから、例えば一度でも補正下着(の気配、男の娘を怖がらせたときに手に入った)で体の一部を締め付けると、補正下着を外したあとでも、その形を概ね維持出来るようになったのです。現世の女性達や女装男達にとっては垂涎ものの能力でしょう。

ただし、輪切りごとの比例拡大・縮小より細かな変形はできません、例えば寄せブラで寄せた偽乳は、ブラなしでは維持出来ません。美尻と呼ばれる膨らみも、女性特有の滑らかな太腿も作れません。それでも、私の基本体型は男の娘たちのそれよりはるかに女性に近くあり、お陰で女装はほとんど完璧になりました。

こうなると、女装している連中に、私が見分けられるかどうか再挑戦したくなります。先ずはコスプレ参加者からです。前回みたいにプロ級は狙いません。ちょっとおどおどしている感じの、それでいてリアルの友達らしき人が見たら無い参加者をターゲットにします。前回より幽霊としてのレベルが上がったお陰で、そういうところが判断できるぐらいの距離まで会場の熱気に近づけるようになったのです。

会場近くの少し暗めの場所でターゲットに接近して
「あのう、もしかして今日のコスプレに参加された方ではありませんか」
と声(テレパシー)をかけます。
「とても可愛らしいコスプレで、すっかり気に入ってしまいました!」
「この次はいつ参加されるんですか?」
「どちらにお住まいで」
とぐいぐい押して行きます。私も女装に自信がついたお陰で、それこそ「私が可愛いって思われていることは知っているから」と自分の美貌を武器にする積極女と同じように彼に迫りました。

どうやら、今までと違って、私の女装に気付かないようです。お陰で、翌々日の夕方に彼の家の近くで会う約束まで取り付けました。大学の1年生で、来月の学祭で女装コンテストがあり、そういう話が回りで盛り上がったので、以前から興味のあったコスプレに初参加したとのことです。なので衣装は主催者が初心者向けに用意した借り物で女性用の服は持っていないとの事。でも、女装に興味がありそうなので、翌々日の彼が情欲ももったら取り憑き、そうでなければ、これ以上の接触はしない事にします。というのも、その学祭で新たなターゲットを見つけられそうだからです。

そして当日。公園で待ち合わせして、人通りが少なめの所をぶらぶら歩きます。定番の喫茶店? それは私のような幽霊には敷居が高いのです。それに夕方、人通りの少ない場所というのは、相手の本性を見定めるのに優れています。そうして、分かったことは、彼が完全な奥手で、どんなに誘惑しても私を触らないということでした。スカートが半分めくれるような転び方を演じても、情欲より心配で体を支えてきたほどで、結局私は彼への誘惑を諦めざるを得ませんでした。こういう事もあるのでしょう。

でも、成果はゼロではありませんでした。というのも、彼の同学年の男子に、ネカマを自慢している男がいることを聞き出したからです。よくよく聞けば、ソーシャルネットワークで女を演じていているそうで、リアルバレしらた不味いよね、と私に心配を振って来るほどです。

こうして私の次のターゲットはネカマ野郎に決りました。リアルで女装しているとか、MMOのみでのネカマならともかく、普通の男生活をして、彼女を欲しがっている男がネットワークでネカマしているのは、出会い厨しかありません。
「それなら、彼をいさめる為に私が会ってあげるわ」
「私、ソーシャルネットワークは苦手だから、ネット上では貴方が相手してくださらない?」
と持ちかけて、話はトントン拍子で進みました。コスプレ女装をするような男の子ですから、ネカマプレーを練習するのは悪くありませんし、私という(彼から見てリアルな)女性の代理という名目があれば、そのアカウントを作る事にも抵抗が少ない筈です。

こうして私は無事に、ネカマ野郎に出会い、ほとんど努力する必要もなく取り憑くことが出来ました。ネカマをやっているのですから、一度くらいは男性器を完全退化してしまう経験をしても良いのです。念のため、紹介してくれた超奥手には、
「ちゃんと説教したから大丈夫ですよ」
と伝えて、ネカマ野郎には四六時中張り付いて、
「ネカマしたら別れる」
と脅かしたので、ネカマ野郎に私が取り憑いていることなんて、奥手さんには分からないでしょう。

こうして2ヶ月後、またもや新しい転落死者が生まれました。事故なのか自殺なのかはっきりしませんが、ネカマプレーを懺悔する遺書らしきものが見つかって、自殺として処理されました。

こうして私は更に精を集めましたが、男転生にはまだまだ足りません。というのも、今までの4人はいずれも不健康で精が弱かったからです。痴漢男などは性欲は強かったものの、精の量は少なく、男としては全然だめなのです。だから、今のまま女装男やネカマ、強姦魔ばかりを狙っていては、あと3〜4人から精を搾り取りださないと駄目でしょう。でも、だからといって健康的な男を狙う気にはなりません。

そんな具合で、私は直ぐに次のターゲットに移りました。それはネカマ野郎がですら、こいつは汚い、と罵る男です。ネカマではなく、ネット上で紳士然としているにも関わらず、巧みな会話術で信用を得てオフ会に持ち込み、始めの3回ほどだけ紳士的にして、その間にネットやリアルで秘密を探り、ギリギリ合法範囲で脅す事で女をモノに、ついでに金銭的にも寄生するという、古典的な詐欺師です。

問題は呼び出し方法です。私は実体がないので、キーボードをたたく事もスマフォンを操作することも出来ません。しかし、ネカマ野郎から、彼が何処に住んでいるかは分かっています。だから、彼を見張って、次の女のターゲットと接触する日程をあらかじめ調べて、先回りして彼を道路で待ち受けます。
「もしかして○×さんでしょうか?」
「お店が分からなかったので、ここあたりで待てば見つかるかと思ったの」
「服とか聞いていたからばっちりでした」
もちろん、相手の容貌や誉め称え、信頼感がある人だと告げます。

妙齢の女性(中身は女ではありませんが)から、そのように「待たれる」というのは、この詐欺師にとっては、仕事をやりやすい、と思ったのでしょう。だめ押しに、本当は捜しもののために店を回っていて、オフ会はその序で、みたいなことを話します。そうすると、彼の方から、他の人たちとの合同オフ会を止めて2人だけでオフ会する提案がありました。私から2人だけになる提案をするつもりでしたが、必要なかったようです。

あとはお決まり通りで、この日のうちに彼に取り憑くことが出来ました。そして、2ヶ月後は、彼も幽霊になっていました。死因は水難事故。真冬に海の海は冷たく荒れているのです。

さて、この頃になると、私が以前取り憑き殺した者たちが、私同様に、新たな幽霊を生み出し始めます。一番手は、案の定、女装未熟男(2人目の幽霊)で、普通に歩いていたのに男からナンパされたようです。どうやら、脅かし方こそマイルドだったものの、その数が多かったお陰で、早い段階で具現化出来るようになり、そうなると女装が楽しくなって、必要のないときまで具現化していたようで、それならナンパされるのも仕方ないでしょう。それが3ヶ月余前。今は既に2人目に取り憑いていて、あと1ヶ月半もすれば、女転生に必要な精がたまりそうです。ちなみに、彼の一人目の犠牲者である幽霊は私には見えません。どうやら直接手を下した相手だけしか見られないようです。

それから、レイプ男(1人目)も、ようやく一人目に取り憑いたようです。彼の場合、闇雲の女性のそばを歩こうとするだけで、覗きとか、恐怖の陥れるといった事はしていません。なので痴漢男(3人目)のような餓鬼の風体でなく、単純に精を失って痩せ細った姿となっていうだけです。それゆえに死んでから火葬の服が失われて、女物の服(の気配)だけが残ったのです。それでもふらふらと女の尻を追いかけ、今なら女装だから怖がられるまいと勝手に思い込んで具現化して近づくということを繰り返していました。それを繰り返すうちに、男色家系の女装男にぶつかって、キスされてしまったことから、幽霊としての本能が、ナンパ趣味(魂の一部)を上回って、男色家を餌食にしたようです。この分だと、彼みたいな男でも転生できてしまうかも知れませんが、私はそこまで心配していません。というのも、よしんば転生出来ても女どまりだからです。

今までに合計5人を幽霊に引きづり込んだことで、私は男転生の為の条件をよりはっきり認識できるようになりました。それは死んでから2年(三回忌)以内に必要な精を集めることです。もしも、期限までに、女転生に必要な魂の量しか集まっていなかったら、よほど強く「男」へ未練が無い限り輪廻の輪に戻され、男に執着した場合は、反対側の世界、すなわち鬼の世界の住人になってしまいます。今の私のペースですら、既に1年と3ヶ月もかかっていて、このままだとあと最低でも半年かかります。レイプ男のペースでそれだけの量を集めるには、よほど精の強い男に出会う幸運がないと不可能でしょう。

痴漢男のほうは、ますます地獄の餓鬼亡者に近い姿となっており、もはや地獄に落とされるのは時間の問題です。彼ぐらいになると、鬼の世界にすら入れてもらえないでしょう。一方、2ヶ月前に幽霊になったネカマ男は、女装を上達することで、女の子に近づこうしています。なので、レイプ男(1人目)と同様に転生できてしまうかもしれません。

閑話休題。私は男転生に向けて次のターゲットと接触しなければなりません。めぼしい候補は、3ヶ月前の女装コンテストで見つけています。コスプレの時と違って、超奥手男とネカマ野郎から前情報を貰っているので、複数の参加者の行動パターンや下宿先を把握しています。なので、彼らのうち、密かに女装に興味のある者を特定するのにほとんど苦労はありませんでした。そのターゲットには、出来るだけ下宿の近くで顔を合わせるようにします。そしてその際に会釈をします。相手には私を知りませんから、近くに引っ越してきた女性とぐらいしか認識しませんが、そういう事を何度か続けたあとなら、声をかけてもおかしくありません。
「このあたりに住んでいらっしゃるんですよね」
こうして日常会話が始まって1週間もすればかなり親しくなります。ここからは、彼の趣味(私は知っている)に合わせた話をして、一気に引き込みます。果たして、彼と出会って半月後、彼は私に情欲をもって、軽く触りました。

2ヶ月後、私はまたしても幽霊としてのレベルが上がった事を直感しました。具体的には女性器を除いて体を自由に変形出来るようになったのです。つまり、偽乳も美尻も魅惑的な足も自由自在で、顔も多少は整形出来るのです。男の娘どころか、女性達からも羨まれる能力といえるでしょう。しかも、女の人を脅さずとも、一度でも見ただけでその人の着ている服と同じものを手に入れられるようになったのです。季節は初夏。薄着が当たり前ですから、今まで以上に誘惑が簡単になります。だから、7人目、8人目の餌食はも簡単に手に入りました。しかも2人をほぼ同時に、異なる時間帯に夢で相手したので、2人合わせて3ヶ月かかっていません。

幽霊としてのレベルが上がった利益はもう一つあります。それは、一旦取り憑いても、幽霊の本能を暴走させずに殺す前に手を引く余裕が出てきたことです。恐らく精が溜まることで「魂=理性」が強化されたのでしょう。それでも7人目を8人目を幽霊にしたのは、7人目が糞野郎で、8人目が精神疾患系の現実逃避者だったからです。後者は「男」として生きる事からの逃避として女装したりしていたほどで、それぐらいなら「男でなくなってしまう」経験をさせるべく幽霊になってもらうべきだと思ったのです。

ともかくも、私は晴れて男転生に必要な精を期限まで4ヶ月以上の余裕をもって集めることができました。
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幽鬼の転生譚(本編:2) - 偽筆屋

2017/08/09 (Wed) 18:17:26

レイプ男を取り憑き殺して数日、僅かに残った理性による罪悪感で、私は少し落ち込みました。車での事故までは要らなかったのではないかと。でも、あの時は私はハイになって最後まで突っ走ってしまったのです。もしかすると、それが幽霊の性なのかもしれません。一旦精を絞り始めたら、よほどのことが無いと最後までいってしまうと。

落ち込んだ理由はもう一つあります。それは、レイプ男から得た精の量が、期待より少なく、最低限の輪廻(女転生)すらできない程度だったことです。この分だと、男転生には更に5人以上取り憑き殺さなければなりません。もちろん人によって精の量は違いますから、運が良ければ1人で済む筈なのですが、そういう「マトモ」な好人物に取り憑くのは悪いと思ってしまいます。勢い、精の量の少なめの者が対象になるわけですから、僅かに残った良心に従うなら、女転生で我慢すべきということになってしまいます。でも、こちらはもっと嫌です。

レイプ男の初七日、私は自身の幽霊としてのレベルが上がったことを直感しました。明らかな違いは髪の毛で、今まではカツラを意識しないと伸ばせなかった髪が、肩までながらも、自由に伸ばせることに気付いたからです。試しに女装を念じてみると、いままでは単純な拡大・縮小しかできなかった体が、縦横別の比率で変えられるようになり、女の細い体に合わせた服によりフィットしたからです。おかげで、中学1年の子供にむりやり女性服を着せるような違和感(肩幅に合わせるから、袖等が長くなる)が減りました。それから、これは直感ですが、キスでなく、もしも相手が情欲を持って私のどこかに触ったら、それだけで情欲を増幅させる気がします。

こうなると、ちょっと試したくなります。もちろん、今まで同様に女装は嫌ですが、それとこれとは違います。早かれ遅かれ次のターゲットから精を搾り取らなければならないのです。いつまでも落ち込んではいられません。それに、レベルが上がったことで、取り憑いた相手を殺す寸前で離れるだけの自制心がついた可能性もあります。あくまで可能性ですが、私が2人目を探し始めるには十分な動機でした。

とりあえず、保険の為に、始めの予定通り「女になってみるのも一興」と考えている男(の娘)を捜します。喫茶の女装メイドの通勤時に、道を尋ねたり、何度も偶然を装って顔を合わせたりして接触しました。幽霊としてのレベルがあがっているお陰で、完全な人間と見なされたいます。

でも、さすがに女装のプロだけあって、薄暗い時刻だというのに、私が男であることを見抜かれてしまいました。そして同好の志という扱いでと見なされてしまいました。そうなると、彼らが私の体に接触することはあっても、そこに情欲はなく、幻覚も発動しません。そういう意味では接触は失敗ですが、代わりに女装技術を丁寧に教えてくれたりします。それには歩き方や仕草まで含まれていて、結果的には参考になりました。

次のターゲットはどうするか。プロを相手にしたのが間違っていたのですから、たまにしか女装をしない人を選ぶのが良いでしょう。例えばコスプレ会とか、大学祭の女装コンテストとかです。問題なのは熱気です。祭りとは、多くの人の陽の気が発散されるので、陰の気の塊である幽霊には入りづらいのです。遠目から眺めてターゲットを絞り、ターゲットが普段基本的に男装であることを確認してから、祭りの翌週あたりのテンションの落ちた状態で接触するしかありません。

一番始めに接触したターゲットは一番女装の上手かった男でしたが、さすがにプロ級で私の女装を一発で見抜きました。普段が男装だからといって、上手い人は目が違うようです。次のコスプレ会まで時間がありますから、私はその間、別のターゲットを捜すことにしました。それは強姦魔です。すでに強姦とまではいかない男を取り憑き殺していますから、それよりタチの悪い男なら良心も傷まないでしょう。幸い、レベルの上がった私は、塀の上ぐらいまで浮遊出来るようになったので、痴漢注意の看板のある場所で、何かが起こるのを待ちました。

暇。暇暇。暇暇暇。

と、目の前に不細工な女装でおどおど歩いている20歳前後の男がいます。初女装外出でしょうか。

本来なら彼をつけて女装のきっかけとか性癖とか調査するのですが、プロの女装娘に見抜かれ続ける日々と、余の暇に、ついちょっかいを出してしまいました。

「すみませーん、**神社への道を尋ねたいのでけど」
とか細い声を出し(幽霊の基本能力であるテレパシーなのですが)、しばらくの会話のあと
「お兄さんって魅力的よね」
と相手が男であることを前提に話をつづけます。
「その格好、私好きよ。安心出来きるから。ほらここって痴漢が出るって噂じゃない。でもあなたと一緒なら安心だし」
と女装を持ち上げて
「そうそう、神社って薄暗いじゃないの、私怖いわ」
と相手を誘います。女装未熟男は女の子に慣れていないのか、顔を赤くしつつ
「行く方向が同じだから送ってあげようか」
と切れ切れに言って、エスコートしてくれます。
そうして10分ぐらい私が誘惑し続けたら、ついに落ちたのか、偶然を装って、私の手をそっと触ってきました。

瞬間、彼の情欲の念が流れてきます。こうなったら私のものです。情欲を増幅させた彼に唇を近づけるや、向こうから貪ってきました。キスの瞬間から、彼は私の胸を触る幻覚、体を接触させる幻覚を覚えます。
「あなたが好き、見た瞬間運命の人だと思ったの」
といいながら、あたかも私は彼の体を触り回る幻覚を起こして、今回もまた、彼のアパートに行く流れとなりました。

そこは確かに「初めての女装」に相応しく、男の子の部屋でした。服も男物ばかりで、女物の服は2着だけ。初めての外出は恥ずかしいから、暗めの道を選んだとのこと。

あとのことは語る必要もないでしょう。ひとたび彼から精を吸うや、幽霊の本能のままに、2ヶ月後に彼が死ぬまで精を貪り続けました。彼の死因は、急性の白血病です、20代男の死亡数は年3000人余りです。その5割が自殺、6分の1が事故ですが、実は成人病と呼ばれる心臓病・癌・脳出血も合わせて6分の1で、彼はそのうちの一人に過ぎないのです。

直接の死因は白血病でも、私がその主因なので、彼も輪廻の輪から転げ落ちて幽霊となりました。もっとも、彼の場合、自身が幽霊であることに気付いても、そして自身の男性器が大きく退化しているのに気付いても、前回のレイプ男みたいに、取り乱していません。いや、むしろそれを経験として楽しんでいる風すらあります。幽霊の基本知識として、転生の可能性があり、その際に男か女か確定すると分かっているという安心材料があるとはいえ、さすが女装願望の男です。実際、たまたま女性を脅して服(の気配)を手に入れるや、彼は、さっそく女装を始め、更に服を集めるべく行動を始めました。しかも、彼の脅し方は非常にマイルドで
「ちょっとぞっとした」
程度に収めています。私の良心を痛めるようなことは全くありません。ただ、ちょっと可哀想なのは、紳士的な脅し方ゆえに、強い恐怖で肌着も手に入れられる事に気付いていない点ですが、彼なら肌着の残り香を使わなくても男を騙せるでしょう。私もうかうかしていられません。

一方のレイプ男ですが、こちらは生前の性が直っていないらしく、近くをたまたま美しい女性が通りかかるや、姿を隠したまま横を歩き始めます。あわよくば、女の肌を触りたいと思っているのでしょう。女の方は、幽霊を見る時ほどの恐怖はなくとも、なにか怖さを感じるのか足を速めて明るいところに出ます。そうなると、幽霊は明るさと生きた人の出す陽気(二酸化炭素のようなもの)に耐えられません。そんな不毛な日々で、彼の体に僅かに残った精気が少しずつ消耗しています。要するに、より青白く細くなっていきます。このままでは、転生なんか不可能でしょう。そういう意味では、私は現世や来世での(レイプ男による)未来の被害を未然に防いだことになりそうで、彼を取り憑き殺したことに対する僅かな良心も消えてしまいました。

こうなると、私は男転生のために、もう少し精を集めても良さそうです。少なくとも、そういう行為に、僅かに残った良心は全く反応しません。

実は2人から得た精気は、女転生で良いのなら輪廻に戻るにギリギリ十分です。要するに私が
「女でも良いから転生したい」
と願った瞬間に私は輪廻の輪に戻るはずです。このことは幽霊の本能として直感的に分かります。そして、余り罪のない女装願望男を「制御の効かない幽霊本能の暴走」で取り憑き殺してしまったことに再び落ち込んだ私は、女転生で妥協することも少しだけ考えていました。でも、彼の49日もたたないうち、そういう考えはすっぱり消えてしまったのです。

さて、女転生で妥協するかどうか少しだけ悩んでいた1ヶ月余りのあいだ、私はただただ、暗闇の塀の上や木の枝で人通りをぼんやりを眺めていました。場所は痴漢が出てもおかしくない人の少ない場所で、人家もありません。だから、視野範囲で男が急に女に近づくのを目撃することもありました。大抵は100m近く離れているため、それが痴漢なのか、あるいは単純に女が男を呼び止めただけなのか分かりませんが、悪質な痴漢である強姦の場合だと、私がこっそり近づくあいだも続いていますし、その後の女の様子が他と違いますから、分かります。だから、私が男転生を決めたときに複数の痴漢事件を起こした犯人は既に特定していました。

あとは語るべくもありません。その2ヶ月後、1人目よりも悪質な痴漢男は、睡眠薬の過剰接種で死にました。私が
「最近よく眠れないので、睡眠薬を買ってくれない?」
とお願いした結果、その睡眠薬を間違って大量に飲んでしまったのです。他の人に私は見えませんから、第3者には彼が自分の意志で睡眠薬を買って飲んだと解釈されたでしょう。しかも自殺か他殺かを確認する調査の過程で、彼が痴漢を繰り返していたことが分かり、かつ2ヶ月ほどは全く被害者を出していないことから、罪を苦にしての自殺か、精神的な不安定による自殺と判断されました。

痴漢男が幽霊になった時は、レイプ男以上に取り乱していましたが、直ぐにレイプ男以上の痴漢行為に走ろうと女達に近づきます。でも、初心者幽霊の場合、幽霊から人間の直接触れることは出来ません。人間が情欲を持って幽霊に接触しない限り(完全な初心者の場合はキスを求めない限り)、幽霊からは手出しできないのです。ただただ、人間が、ぞわーっとした恐怖を感じるだけで、大抵の女性は足を速めてその場から逃げようとします。そして、その場に服(の気配)が残るのです。

痴漢男の行為はそれだけにとどまりません。風呂場を覗き、果ては女の寝室に入り込んで、完全に退化した男性器でセックスしようとします。もちろん、接触自体が不可能ですし、女も寝ていて恐怖を感じないのですから、彼は得るものがなにもありません。その為か、彼の体に僅かに残った精気も急速に失われ、49日を過ぎてほどないのに、その姿は地獄の餓鬼のようです。このままでは、地獄の獄卒に連行されてしまうでしょう。そう思ったとき、私は直感的に悟ったのです。この手の悪霊は、生理の苦しみと出産の苦しみを延々と与えられ続ける罰を受けることを。そして、その穴はどんなに丁寧に扱っても、決して快楽を得る事がないことを。生理と出産以外は男に戻って、男に犯されること。その際も一切の快楽はなく、恐怖と苦痛のみに支配されること。罰の期間こそ分かりませんが、痴漢男に相応しい罰と言えるでしょう。

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幽鬼の転生譚(本編:1) - 偽筆屋

2017/08/06 (Sun) 18:22:48

幽霊初心者の私は、始めのうちこそ、自身の転生のために他の若者を犠牲にすることをためらっていましたが、次第に転生本能=吸精本能が強くなることを止めることは出来ませんでした。幽霊とは転生欲以外の欲望・楽しみの全くない苦しいものです。生きているうちに楽しんでいた娯楽はすべて味気なく感ぜられ、知識欲すら消えてしまっています。地獄をいうのを経験したことはありませんが、これは一種の地獄ではないかと思うほどで、できれば早くこの状態から逃れたい。それが唯一の欲である転生欲をますます強めるのです。

だから、数週間もしないうちに、条件次第では生者の精を奪って衰弱させても構わないと思うようになっていました。そのきっかけになったのが、フワフワと漂っていううちにテレビの映像に映った女装男の話。そうです。今の現世には「男の娘化」を望む男が少なからず存在するはずです。そんな簡単なことを私はなぜ今まで忘れていたのでしょう。私の今の体は、体型こそ男ですが、生前より華奢で色白で体臭もなく、何より男の象徴がほとんど消えています。陰嚢や陰茎の入れ物こそ残っていますが、その中身がないのです。女装趣味のある男達には理想的な体ではありませんか。

しかも、幽霊になってみてわかったことですが、男(オス)に転生するためは、女(メス)に転生するのに比べて数倍もの精気が必要となります。私は今でも出来れば男で転生したいと思っていますが、女に転生したがっている男や、女というのを体験してみたがっている男なら、私に精を取り尽くされて幽霊になっても、転生の敷居はそこまで高くないでしょう。せいぜい、別の女装男を一人衰弱させる程度の精気で十分の転生できるでしょう。だから、そのような男から精を得ることに、私に僅かに残った理性(魂)も差し障りを感じなくなったのです。

こうして、私は女装趣味の男を見つけるべく、女装メイド喫茶を張るようになりました。メイド達の顔と名前、性癖も覚え、常連客のうちの女装者の顔も覚えて、いよいよ彼らを誘惑する方法を考え始めたとき、私ははたと問題に気付いたのです。女装に慣れている男が、私のような去勢男に情欲するものだろうか、と。体型はともかく、少なくとも彼ら以上に「セックス対象」としての女の子を感じさせる衣装でないと、誘惑そのものが出来ません。不幸にして、私にはその手の知識はないし、私の持つ服装も限られています。それは、死を感じた瞬間から火葬までの間に着せられた服です、具体的には、私が衰弱で倒れたときの服と、死出衣装、病院服です。少なくとも情欲を抱かせる服ではありません。

そのことに気付いて落ち込んだ私は、更に理性を失い、別の方法を模索するようになりました。それは「精の有り余っているものからなら奪っても構わないだろう」というものです。そんな連中の行く場所はただ一つ、ソープランドです。

ソープランドで一番始めに気付いたこと、それは女装メイド喫茶の女装連中と、娼婦連中との、性的魅力の圧倒的な差です。顔は同等程度、いや、むしろ女装メイドのほうが平均的には可愛い程度です。でも肉体の魅力と、それを全面に出す衣装が全然違うのです。娼婦のなかには、露出度が低くとも「この女とヤりたい」と思わせるような服を着ている強者すらいます。となれば、私はこの連中の仕草を真似、さらに衣装をなんとか調達しなければなりません。そこで、私は、露出度の低い強者に目をつけて、彼女を追うようになりました。更には彼女に直接尋ねてみたいと思うようになりました。今の私には理性というのが余り残っていないので、その善し悪しを判断出来なくなっていたのです。

そうして数日後、彼女の仕事からの帰り道、彼女の回りに誰もいない瞬間が現れました。彼女に直接尋ねるチャンスです。街頭と街頭のあいまのちょっとした闇を使って、私は彼女の前に立ち、姿を現そうとしました。死んでからこのかた、姿を人目にさらすのは初めてなので上手く行くかどうかは分かりません。同時に声もかけます。

彼女はぞくりと身震いさせるや、私の横を素早く逃げ去ってしまいました。そして、彼女の逃げたあとには、彼女の着ていた服が残っています。もちろん彼女が脱いだわけではありません。服の気配だけが残ったのです。私は直感的に、これが「幽霊仕様の服」だと分かりました。サイズこそ合いませんが、幽霊は体のサイズを変えることが出来ます。初心者幽霊の私でも、一定比率の拡大と縮小(高さと幅の比率が一定の相似形)なら可能です。そして、私に入り込んだ直感知識では、幽霊としての経験を積めば高さと幅の比率を変えることも、もっと複雑な変形も可能です。コピー機の機能のようなものです。いや、上級者ほど使いこなせるというのは、グラフィック用のソフトのツールみたいなものかもしれません。ともかくも、こうして、私は初めて、新たな衣装の獲得に成功したのです。

後日彼女が男との寝話に語ったところによると、闇の中になにかぼんやりしたものが浮いたように思った瞬間に、ほとんど聞き取れないような声が聞こえたとのことで、通り魔だかストーカーだか幽霊だか宇宙人だか知らないけど、おもわず恐怖を覚えて、我を忘れて逃げたのだそうです。なるほど、私の存在が原因で怖くなったからこそ、そこに影のように服(の気配)が残ったのでしょう。

もちろん確証はありませんから、他の娼婦でも試してみます。彼女らはことごとくおびえた様子で逃げ、そのあとには確かに服の気配が残ります。3人目だったか、4人目だったか、その時は、携帯の写メを取られるという予想外の事態となりましたが、CCDカメラの写真ごときに私が映る筈も無く(写メが幽霊を写すのなら、葬式の写真のほとんどは心霊写真になるはずだろう)、証拠は残らず大事には至っていません。それどころか、フラッシュの瞬間に、私の輪郭がよりはっきり映ったのか、今まで一番大きな驚きを与えたようで、上着だけでなく肌着すら残っていました。そして、それ以来、肌着が残ることが多くなりました。おそらく、人を恐怖に陥れる回数が多いほど、幽霊としての格というか能力があがるのでしょう。

娼婦達をおどかした翌日や翌々日は、彼女たちの会話に耳を傾けます。すると、回数を重ねるにつれて、私の姿が、よりはっきりしてきたことが分かります。と同時に、衣装も私が身につけたものであることも分かります。となれば、完全な人型として認識出来るぐらいに姿を現すことができるまで、この「ウラメシや」訓練を続ければ良い筈です。

もっとも、同じ地域で同じような方法で人を脅しすぎると、悪霊として退治されかねないというリスクがあります。そもそも、魅力的な女達に怖がられ、逃げられるなんて全然嬉しくありません。娼婦達が恐怖で逃げる様は、苛虐嗜好という特殊性癖を持っている幽霊には、退治されるリスクを負ってでも続けたくなる快感でしょうが、ノーマルな私は違うのです。だから私は、必要な服をそろえたところ段階でソープランドを離れることにしました。

それでも私は素晴らしい成果を得ました。それは性的魅力を出す服だけではありません。恐怖の度合いが高かった場合に残る肌着には、当然ながら彼女たちの体臭が染み付いており、その残り香のお陰で(体臭の無い)私は、視覚的だけでなく、臭いの上ですら女を装うことが可能となりました。性交で現場では視覚情報は失われ、触覚と嗅覚だけに頼ります。そのうちの嗅覚を騙す方法を手に入れたのです。

性的魅力を出す服と偽体臭。この二つの成果に満足した私には少しだけ理性が戻り、当初の予定どおりに、女になってもよいとか、女を経験してみたいと思う男をターゲットにすることにしました。いや、これは名目上の理由です。いかの転生の為とはいえ、ソープランドに来るような脂ぎった男や不細工な男に抱かれるのは体が拒絶したからです。セックス相手は出来れば美女が良いのです。それが物理的に無理なら、せめて将来(幽霊になった時に)美女になるような奴でないとやってられない。そう欲してしまったからです。

こうして以前の女装メイド喫茶に舞い戻った私は、その女装の出来にすっかり失望してしまいました。何となく可愛いけれど、性的魅力を感じさせない女装だったからです。その意味での許容範囲と言えるのは1人か2人。もちろん、私が精を絞る相手という意味であれば、ここの女装メイドの大半が許容範囲でですが、男を情欲させるかというと否で、要するに「ネタ」の一種に過ぎないのです。とはいえ、胸の谷間の作り方とか、さりげない喉仏の隠し方とか、偽尻を使って腰の括れを作ったりとかの技術は参考になります。もちろん、これら女装グッズを通勤から使っている人を脅して手に入れたのはいうまでもありません。ただし、娼婦と違って、肌着や補正下着、女装グッズまで落とすほどに驚いてくれる人は多くなく、今の私の技術でも3人に1人程度です。とはいえ、女装娘の服が加わり、かつ私もよりはっきりと姿を現すことができるようになりました。

女装用具を取り揃えた私は、今度は本物の女を手本にすることに注力するようになりました。具体的には、色々な人の噂話から、ビッチと呼ばれている人を特定して、その性的アピール色を学ぶことにしたのです。彼女たちの「キスかまわないよ」「セックス構わないよ」という各種信号は、スカートのチラ上げぐらいしか知らない私には参考になります。もちろん、これらビッチ達を怖がらせて服(の気配)を手に入れることは忘れません。

知識と道具を揃ったところで、いよいよ練習です。実をいうと、女装なんて幽霊になった今も恥ずかしくて、いままで一度も練習してきませんでした。いや、あの女装メイド喫茶の軽いノリなら、そこまで抵抗はないのですが、性的にみられることを目的とする女装というのは、来世も男に転生したい私には苦痛なのです。もっとも、それでも現世よりははるかにマシです。というのも、生々しい着替えでなく、それこそゲームのように「装着」を思い浮かべるだけで着替えが済むからです。それに接触感も余りありません。幽霊だから当然なのです。ただし接触感がゼロでないのは、例えば寄せ胸の形の調整とかそういったものに必要だからで、それはそれで女装の訓練に役立ってくれているわけです。

持っている服を全て着こなす練習を一通り終えたところで、いよいよ実践です。ただし、練習程度なので、本命の「女の子とのセックス歓迎の男の娘」たちは外し、大学生を適当に狙います。もちろん、肥満した連中は外し、どちらかというとインドア系の華奢な連中です。

一人目は接触する前に気味悪がられて逃げられました。服の気配が残されたといえば、だいたい分かると思います。2人目も接触失敗。ただし、服の気配が残っていませんから、怖がられなかったようです。こんな風にして、気味悪さや不自然さを減らして、5人目だったか6人目だったか、いきなり私を捕まえてキスを求めてきました。目を見ると理性が飛んでします。いわゆる痴漢という奴で、これが現世の人間ならこのままレイプされるでしょう。

私は一瞬逃げようとしたものの、次の瞬間には幽霊の転生(吸精)本能に突き動かされていました。嫌々風にキスを認めたのです。一旦キスしたら、そこからは幽霊の支配下です。男は私が作る幻覚のまま、私に胸があると錯覚し、私の体が高校生のように柔らかく、そして私に女性器があると錯覚します。そうして、とうとう下半身をむき出しになって私に射精しました。もしも第3者がこれを見たら、立ち小便の格好で何も無い空間に陰茎を突き出している変態にみえるでしょう。もちろん法的には猥褻物陳列罪となります。ただし、精液はそのまま私の糧となりますから、第3者からは見えません。

「ここではだめ、あなたの下宿にいきましょうよ」
と男に声をかけて、そのまま男には、私と手をつないだ幻覚を与え続けて、その夜は、男から徹底的に精を搾り取りました。そして、その翌日、私は悟ったのです。私のような初心者幽霊でも、きちんと精的に結ぶついた相手なら、その夢に入り込めると。こんなレイプ男なら、精を搾り取って殺しても、私に僅かにしか残されていない良心は傷みません。

精を搾り取られて判断力が鈍った男は、私にねだられるままにレンタカーでドライブに行き、崖のカーブで、私に視界を塞がれて、自損事故で死んでしまいました。死因のほとんどが幽霊(私)なので、男は輪廻の輪から転げ落ちて幽霊となってしまいます。

この時に知ったのですが、私にはこの男が見えるのに、この男には私が見えないようです。それは、自分が取り殺した相手しか見えないことを意味します。そういえば、私は自分が幽霊になって以来、回りに幽霊が見当たらないのが不思議でしたか、いないのではなく見えないだけなのです。そして、そう思い至ったとき、私は、私を取り殺した幽霊が私の女装訓練を見ていただろうことに気付いて、とても恥ずかしく感じたのです。
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幽鬼の転生譚(序) - 偽筆屋

2017/08/05 (Sat) 22:47:19

聊斎志異に限らず、古来中華で「幽霊(昔は鬼と呼ぶことが多かった)」といえば、輪廻の道から滑り落ちた死者を指す。

そんな彼らにも這い上がる道は残ってる。それは、輪廻転生の道に戻ったり(崖から落ちた者が崖を登るようなもの)、幽霊や鬼世界で力を得る(国境の谷に迷い込んだ者が、隣国側の崖を登るようなもの)ことだ。そのために必要なのが、生者の「精気」という名のエネルギーだ。存在維持(生者でいえば新陳代謝)のためのエネルギー(燃料)こそ、お供え物やお祈りなどで十分だが、這い上がるには生者なの「生(なま)」のちから=精気が必要となる。その中で最も効率的なんのが男の精であり、具体的には精液と精子だ。だからこそ、怪異の類いは美女に化けて男の精をむさぼる。

初心者幽霊が男の精を得る手段は直接的な性交に限られる。というのも、それが男の精をむさぼるのに一番効率的だかからだ。格が上がると夢の中での性交でも可能となる。西洋風にいえば、前者がサバキュスで後者は夢魔と云ったところだろうか。上級鬼(輪廻から外れて鬼=あちら側の世界で上に登ったもの)となると、近くにいるだけで生気を奪うが、そこまで危険な鬼(もはや幽霊とは呼ばれない)は道士(道教の退魔師)や法官(仏教の退魔師)による討伐対象となる。

さて、幽霊に精をむさぼり尽くされて死んだ者はどうなるか? 詳しくは(*)に説明するが、簡単にいえば、彼らは、同じタイプの幽霊として新たな犠牲者を求めるようになる。その姿は、幽霊になった当初は一点を除いて生前の姿と同じだ。例外は陰部。「精」を絞り取り尽くされたゆえに、精気の象徴である男性器、具体的には睾丸と海綿体(陰茎の勃起可能な部分)が形骸化する。要するに、宦官とほぼ同様の姿となる。

精気を吸い取られた者が、次々に新たな犠牲者を生み出すなら、幽鬼はねずみ講式に増えるはずだが、現実にそうならなかった。

昔の男達は、ほとんどが肉体労働者で、毎日十分に陽光を浴び、非常に多くの精気を持っていたからだ。いくら精気を与えようとも、それこそ複数の幽霊を輪廻の道に戻してもぐらいで精を搾り取られても、死ぬなんてもってのほか、衰弱することすら無かった。もちろん、体力が落ちて流行病にかかりやすくなったり、事故に遭いやすくなって、それゆえに命を失うことはあるが、そういう死因の場合は、幽霊の行動が主因でない限り、幽霊にならずに輪廻転生する。

その一方で、書生と呼ばれる連中(科挙勉強中の受験生)、例えば聊斎志異の主人公たちは、机に向かい続けている貧弱男だ。陽光のもとでの運動や肉体労働等、精力を高める手段が(受験生ゆえに)事実上禁止されているため、ちょっと精を搾り取られただけで衰弱する。それでいて、彼ら書生のほとんどは親が金持ち・役人ゆえに、母親も祖母も超絶美人だから、遺伝的に顔は良い。要するに、顔・体型とも、少女漫画の主人公のような優男、現代風にいえば「中性的な容姿」で、面食いの幽霊たちにとりつかれやすい。かくして、一人の幽霊が何人もの若者の「精を吸い尽くして」殺してしまうのである。

結果的に、大多数の幽霊は「元優男」だ。彼らは、幽霊になった当初の姿こそ(男性器がかなり退化しただけの)生前の姿だが、次第に男性器以外の精気の元、例えば体格や皮膚、顔つき等から「精」が失われ、骨格が細くなり、色が白くなり、顔から厳つさが消える。要するに、今風にいえば「男の娘」化する。

彼ら「精喪失型」の男の娘幽霊は、転生したいという本能に従って(詳述*)、生きている男達の精を性交で得るべく、男を誘惑し始める。しかし、それは簡単ではない。というのも、どんなに華奢で、かつ男性器が退化しても、女ではないからだ。胸も尻もなければ、滑らかな腰の括れもなく、肩幅も広いし、喉仏もある。女性特有の曲線美は何処にもない。

そういう彼らがいかにして小柄で柳腰の美女に変身したかについて、聊斎志異はおろか、いかなる古典書もほとんど書いていない。幽霊には実体がないから、いくらでも変形出来ると思われるかも知れないが、精液という実体を吸収してしまっている事実、往々にして一緒の食事をしている描写、なによりも合体の触感を与えているのことを考えると、簡単に納得できる説明は存在しない。死んだ美女の皮だったとかや煙から生まれたという例話はあるものの、それらは討伐されるレベルの上級鬼であって、初心者幽霊から明らかにかけ離れているからだ。精々が、夢による誘導で、それによる夢精の一部を取り込んでいるというもの。真相は闇だ。

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(*)中華には魂魄(こんぱく)という概念がある。魂は人間の理性を象徴し、魄(はく)は動物的な欲望(本能を含む)を象徴する。そして、このうちの魂は、死後しだいに蒸発(昇華)し、残された魄(はく)は、欲望のままに行動を始める。そして、欲望の最大のものが食欲(精気を貪る欲)と復讐欲となる。いずれも理性の箍(たが=魂)が完全に外れた場合、悲惨な結果をもたらすことは生者・死者に関係ない。日本でいう「幽霊が悪霊化する」というのは、このような状態、すなわち、魂が完全に蒸発(昇華)しきった状態を指す。他に大きな欲として「思い残し」欲があるが、こちらは理性による欲という面が強いので、余り悪影響を与えない。
 次第に魂を失った幽霊は、「はやく輪廻の輪に入りたい」と考える。そして、精喪失型の幽霊の場合、手段は生きている男の精のみが、輪廻の輪に戻る為の唯一のエネルギー源(燃料)なのである。そして上述するように、初心者幽霊は、男とセックスしなければ、幽霊の状態から抜け出られない。99%以上の男にとって(性的マイノリティは統計的には0.5%未満だそうだ)これは想像するのもおぞましい行為だが、幽霊状態という(RPGでいう)「状態異常」においては、男を受け入れることへの精神的忌避感(理性:要するの男の魂)が非常に薄められており、大抵の幽霊は年月を経て、男を受け入れることに抵抗がなり、本能に従って男の精を求めるようになる。ちなみに、昔の中華では男同士のセックスは男色に限らず頻繁で(昔の寺のようなもの)、大抵の幽霊は49日以内に男を誘惑する手だてを考え始める。
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従業員募集中 - 夢喰

2017/08/04 (Fri) 20:36:57


ギャンブルと利子で200万円近い借金を抱えた俺は、次の利息支払い期限の2週間前、借金取りから一つの提案をされた。

彼らの経営する女装メイド喫茶で働く者を紹介したら、そいつらの給料の5%相当額を俺の借金返済にあて、かつ1人目が働きだした段階で利息を年6%に抑えるというものだ。連中にとっては、俺が不良債権になるぐらいなら、ブラック気味の女装メイド職を見つける方が良いらしい。そう、ブラックだ。月給こそ18万円で俺の今のバイトより若干多いが、ウエイトレスなのに名目だけの役職で、朝10時から夜23時マイナス昼食夕食計1時間の12時間勤務が月25日300時間、そのうちの半分近くが事実上のサービス残業で、実質時給は600円。

ただし、女物であれば店長が認める範囲で月2万円分の服を経費で買える。女物であれば下着、普段着、夜着、外出着を問わない。そして制服も各種取り揃えていて、日替わり週替わりで変わっていく。だから、服代を含めても実質時給が600円程度ではあっても、女装の好きなニートには悪い条件ではない。

給料の5%相当額とは1万円(利息相当額)だから、5人見つければ年60万円の返済となり、利子込みで4年弱で返済出来る。もっとも、利息に関してはこうも釘を刺された
「もしも2週間以内に1人目を見つけなかったら、条件の18%を1年単位でとるから、お前の借金は一気に35万増えるぞ」
俺の借金は書類上は100万円以下小口が3つに分かれていて、その場合の法定利息は年18%、それを月ごとの利息でなく年単位の利息で取るというのだ。

2週間は厳しい。バイトでギリギリの生活費を確保している俺に、候補者を見つける余裕はとうとうなく、期限まで4日となってしまった。焦ったおれば、一つの可能性を打診した。それは、俺自身が女装メイドになる場合も利息が6%に押さえられるということだ。始めは渋られたが、結局、最低2年は続ける(1年以内に辞めたら18%の利子を全額払う)という条件が加わって、俺の提案は認められた。書面に捺印したあと、
「最初に提案しておけば、もっと有利な条件で契約出来たのにな」
と笑われて、初めて俺は失敗に気付いた。まあ、元々100万円に満たない借金を悪化させるような駄目男が俺だ。

(続く)


2年目の配置換えで、回りはニューハーフばかりになる。

天使の声に惑わされて:4 - 夢喰

2017/04/22 (Sat) 15:33:12

 女童声がある程度満足できたので、春休みからアイドル曲を始めることになった。昨秋の古い歌謡曲と違って、今度はAKB系の曲だ。小父さんの提案した新曲に僕が「また昔の歌なの? はあ」って文句を言ったら、小父さんが提案してくれた。
 2週間ほど練習した頃に、ようやく親にも何を歌っているのか教えたら、一瞬きょとんとされたあとに
「アニメソングもやるんだろう」
と尋ねられた。そうだそうだ、あまりに身近すぎて忘れてた。これをやらきゃ、折角のボーイソプラノ、しかも女の子っぽい雰囲気のある声と言うボクの特徴が宝の持ち腐れじゃないの。いつも口ずさんっていうのに。大人の人はこれを「盲点だった」って言うらしい。だから、つい
「まだだけど、歌いたいなあ」
と答えると
「あ、でも、その前にアニメ声の練習が必要かな」
とお父さんが考え込んでしまった。
 アニメ声。普通の小学4年生はそんな言葉に詳しくないだろうけど、僕はアニメソングの歌手を調べているから知っている。魅力的な子供の声が出せるお姉さんたちが、アニメの時だけに出す特別な声だ。たとえば、「ロリッ子声」とか「可愛い声」とか。そんな声、同級生だって出さないものね。でも、多くの大人にとっては実際の子供より魅力的らしい。だからアニメ声優って人気あるんだって。
 声を作るならボクだってできる。声を作るだけじゃない。歌だって上手い。そんなボクがアニメの主題歌を歌う立場に抜擢されたら、きっと人気もあがるだろう。ふふふ、ボク有名人間違いなし!
 いつの間にか、アニメの中で、ボクの顔で魔女っ子の格好やお姫様の格好をする画面を思い浮かべてしまって、ボクは恥ずかしくなった。でもなんだろう、この気持ち。歌が本当に上手かったらきっと喝采ものだ。恥ずかしいけど誇らしい。そんな複雑な気持ちでいると、お父さんから
「アイドルの女の子ってのは、可愛らしさを作っているんだ。だってクラスの女の子の普通の姿と違うだろう?……」
と、さっきボクが思った事と同じ内容を言われた。うんうん、クラスの子がアイドルの真似なんぞ普通にしてたらキモい。アイドルはテレビの前で見るから良いんだ。
「……その一環として声もある、要するに連中だって努力しているんだな。それに勝つには、な」
 ここまで言われたら、次は「日常的な練習」って答えであることは直ぐ分かる。つい20秒前まで感じていた恥ずかしさがスーっと抜けて嬉しくなった反動で、ボクはお父さんにボクの自主性を見せるべく、出来るだけ可愛いらしさを出すような声で
「じゃあ、普段から練習してみるー」
と答えてしまった。冷静に考えればものすごく恥ずかしい真似だけど、その声があまりに酷かったのか、ボクの表情が変だったのか、お父さんだけでなくお母さんにまで
「プッ、フー、それじゃあ全然だめね、まあ、頑張ってみて」
と笑われてしまった。ふん、いいんだ。そう思ったボクはふて腐れた女の子のような顔を作って
「見てらっしゃい? 一ヶ月で可愛くなってみせるから」
と両親に宣言した。
 夜になって、さっきの宣言を思い出すと恥ずかしい。うわ、ボクって、家の中では「アイドルっぽい女の子」のふりをするって宣言してしまったようなものだから。でも、口に出した以上、家では「女の子の口振りの練習」を演じ続けなければならない。両親に本心でどう思われているか分からないけど、そうするしか思い当たる道がない。そして、そんな練習をしていることをしているなんて、両親以外に知られたら、もっと恥ずかしい。これは小父さんすら秘密にしたいぐらいの恥ずかしいことだ。だって、歌以外のことだから。
 しかし、そんな葛藤も、翌日に
「なんだ、もう練習は終わりか」
と笑い顔で親に言われてすっと抜けた。そうだよ、ボクはプロ級になるんだ。家の中だけならいくらでも声の練習をしてよいじゃないの。それに会話だけじゃなく、アニメソングを小声で歌う練習も家の中でしているから、その延長で女声を日常会話で使うのは、家の中だけなら、そこまで抵抗がないんだ。こうして意識して女声を出すようになった翌週にはゴールデンウイークとなった。

 連休は小父さんのところの練習が休みだから、ずっと家で「可愛らしさを作った」女声を出し続ける。それだけじゃない。連休の前半は家にいたが、後半は2度ほど日帰りで遠出して、その間もずっと可愛い声を出し続けた。というのも、肋骨を締め付けた状態で外を歩く事で、発声コントロールを試してみたらどうかな、ってお父さんに言われたからだ。ただ
「試す価値はあるという程度だけど、それよりも、将来、ステージ等に上がる時にあがらないように、外で女声を練習するという度胸付けの方が、意味が大きいかな」
だとのことで、効果の方はお父さんも自信はないみたい。
 でも、確かに遠出は「可愛い女の子の演技」には良いかもしれないと思って、ボクも同意したんだ。知り合いに見られるのは恥ずかしいけど、遠出の時なら少なくとも知り合いはいないから、恥のかき捨てで思い切ったことができる。だって、髪の毛は新学期の時にあまり切っていなくて、それが1ヶ月伸びた今は、お転婆な女の子として見られてもおかしくない程度にはなっているし、歩く為の子供服って、男女兼用が多いから、女の子の言葉を使っても問題ないんだよね。
 結局、トイレこそ、その前後だけ「可愛さを作る」をやめて、利用者の少ない男子トイレに入ったけど、それ以外は丸一日(それも2度)女の子を演じて、言葉遣いも仕草も女の子風にしたんだ。休みの残りも、突然仕草を変えては、それこそ不真面目な気がして、女の子を演じてしまったんだ。その結果、2度目の遠出では、やはり同じように遠出に出かけている家族連れの女の子と仲良くなってしまって(向こうはボクの事を完全に女の子と思ったみたい)2時間ほど一緒にいる羽目になったけど。
 このときまず思ったのは、異性と一緒にいると楽しいって事。小学4年となると、男女で垣根が出来てしまって、女子に近づけなくなる。だから、こうやって女の子と自然に仲良く話せたのは学級が変わって初めてだった。それが可能になったのは、ボクが女の子っぽいから。だから、相手も安心してボクと話をしてくれるってことに、ボクはそのとき気がついたんだ。(あとから聞いた話では)これを大人の男がやったら犯罪だけど、ボーイソプラノの男の子なら問題ないんだって。彼女と2時間で分かれたのはトイレに行きたくなりかけたから。まだ我慢できるけど、ギリギリになる前にお父さんがこっちの意を汲んで別行動を提案してくれた。さすがに女子トイレはないよね。

 そんな連休を過ごした結果、連休後も家では半分無意識に「可愛らしい」声と言葉遣いの練習をするようになってしまい、5月を終える頃には、それに違和感すら感じなくなった。でも、もちろん、それは家の中だけの秘密で、小父さんにすら打ち明けていない。
 とはいえ、小父さんはボクの変化に感づいているみたい。だって、ボクの「アイドル曲」の歌い方というか、その振り付けが明らかに上手くなっているからだ。声も、今までは単純に歌手を真似るだけだったけど、段々、ボク自身の可愛さを武器にするような歌い方になったみたい。そう、物まねでなくオリジナルな可愛さ。それを目を見張った小父さんが
「家で特別な練習をしてないかい?」
と尋ねるのも当然で、ボクはそれに
「そりゃ、世界一を目指すんだもの、復習しているよ」
とだけ答えている。いや、さすがに、正直に答えられないよね。その事に気付いて、急に自分のやっている事が恥ずかしくなったんだけど。
 秘密は知る人間が限られるほど、それを知られるのが恥ずかしい。でも、同時に、そういう恥ずかしい秘密は、秘密であるからこそ、のめり込む。そんな真実を他人から教えて貰ったのはずっとあとの事だけど、ボクはそれを肌で感じていた。そして、恥ずかしさの元になる秘密は、元々は女の子の真似をしているという「秘密」と、女の子を異性として意識し始めているからという「秘密」だけだったけど、女の子の気持ちを歌えば歌うほど、そして国語力が上がって歌詞の意味が以前より分かるようになるほど、異性としての女の子そのものになりきる事に興味が沸いて、その「秘密」の度合いが高くなっていったんだ。そういう気持ちって親にすら知れたくない。
 そういうやましい気持ちを持つと、今まであれほど(慣れたとはいえ)嫌だった、女の子の格好での歌の訓練が、女の子の格好が出来るということで興味が出てくる。でも、そんな嬉しさを皆に知られるわけにはいかないから、ひときわ
「プロ意識として、義務的に」(「いやいやながら」ってのは、プロ意識が足りないって怒られる)
という感じで小父さんとの練習の時にワンピースやセーラー服を着ている。

5月後半の衣替えは、ボクがそういう複雑な気持ちを持ち始めているときにやってきた。新学期に合わせて冬用の厚手のジャケットから春用の薄手のジャケットになった時は、結局のところセーター服(小父さんの所へ練習に出かける時の服)を隠すという役割に違いなかったから問題なかったけど、今回の衣替えはジャケットそのものを脱ぐというものだから、セーター服が人目に付くつくことになる。それはクラスメートなど知り合い見られてしまう可能性を意味している。
 一応は男の子用のセーラー服のはずで、実際リボンとかついていないし、下はズボンだから、女装ではないはずなのだが、以前お母さんが替えズボンを買った時に女物しか白・水色のズボンがなかったようなことを言っていたし、艦隊コレクションのコスプレが出て以来、この服がその系統に勘違いされるような気がして、街中で上下セットの様子を見せるのは少し恥ずかしい。でも、連休以来、女の子の格好に好奇心が出てきて、このどっちかずの格好であれば、恥ずかしさよりも自然に着てみたいという好奇心(誰かがウルトラマン変身願望とかいってたけど)の方が勝って、結局、セーラー服デビューを果たすことになったんだ。
 その初日はさすがに人目が気になった。だって、同年代だけでなく、大人たちがチラチラこちらを見るのが分かるから。きっとコスプレと思われているのだろう。でも、5〜6回も同じ時間帯に小父さんのところに通っているうちに、そんな視線はほとんどなくなった。これって「案ずるより産むがやすし」って奴だよね。
 もっとも、初めて見かけるような大人だと、ボクのことをじっと眺めている人もいる。きっと、コスプレ少年なのか、ボーイッシュな女の子か分からないのだろう。だって視線に嫌らしさがないから。でも、そんな中にも変な視線を感じることがあって、ああ、これが「女の子の嫌がる視線なのか」って理解してしまった。去年までのボクならきっと分からなかったと思う。そして、そういう視線を通じてボクはますます女の子の気持ちで歌うのが上手くなっている気がするんだ。

 そういう普段の積み重ねが練習にも現れたのか、上達が認められて、七夕にいつもの喫茶店で小父さん達のコンサートに出演することになった。デュエット2曲とアイドル曲2曲と普通のソロ1曲。残りは小父さんが歌うやつで、これもクラスの音楽好きが来た。その為に服も新しくスカートとブラウスの組み合わせを買って(なんと新品!)、年末に使ったワンピースやセーラー服と途中で着替えたりしたんだ。
 歌う前は
「去年ほど恥ずかしくないよ」
って強気だったけど、いざ歌うとやっぱり恥ずかしくて、ぎこちなかったかも知れない。でも、お父さんにいわれた通りに小父さんへのサプライズとして、ボクの出番の最後のデュエットで、最後にアニメ声で歌ったのは、皆には好評で(小父さんは驚きつつも調子を崩す事なく普通に歌っていてさすがと思った)、コンサートは成功だったと思う。
 そこまでは良かったけど、クラスの女の子に
「その格好似合ってるよ」
「今度学校でも歌ってよ? 出来ればアニメ曲を。もちろん、その格好でお願いね」
「いや待って、私たちが服は用意するよ」
「放課後一緒に遊ばない? 女の子の格好をすれば私たちと一緒にいても囃されないわよ」
とか言われたのは予想外で、顔や火照ってしまった。恥ずかしいというだけでなく、冗談じゃないという気持ちと、でも興味がないわけでもない(それを隠したい)という複雑な気持ちで。それを受けて
「わー恥ずかしがっってカワイイー」
って言われたのには、さすがに恥ずかしさしか感じなかったけど。
 そのあとの打ち上げで、当然ながらアニメ声の話が出たけど、小父さんは一応怒りながらも、それがお母さんのいたずらだったと解釈したみたいで、
「あの声を秘密練習してたから、上手くなったんだな」
と納得してくれた。そして、
「アニメソングは基礎ができてからと思ったけど、良い結果がでているから解禁だな」
と言って、次の練習からはアニメソングも加わるようになった。

 コンサートから数日後、お父さんから魔法少女のコスプレを渡された。唐突でびっくりしたけど、話を聞いて更にびっくりした。お父さんが会社の後輩に
『小学校の子供が歌の練習のついでにアニメ声の練習もしている』
と七夕コンサートのついでに宣伝したところ、その時の
『実は当日のサプライズだけど、アニメ声でも歌うんだ』
という『アニメ声』キーワードに興味を覚えた後輩さんが、コンサートにこっそり来て、ボクがコスプレの原石だと思ったらしい。それで、後輩さんはノリノリでお父さんをその手のショップに連れて行って、無理矢理買わせたそうだ。子供サイズだったので元々安かったところを、さらに常連の強みで「着用して歌っている動画と引き換え」という条件の交渉をして更に5割引を勝ち取ったんだって。そのまま転売しても黒字になる価格らしい。ただし動画の期限は7月末までの3週間。夏休みイベントに間に合わせるんだって。
 単に1曲歌って動画を撮るだけなら、直ぐにでも出来る。でも
「良い動画だったら、宣伝に使われる筈だから、デビューのチャンスだぞ」
と言われたんじゃ、本気を出さなきゃいけない。その日からボクは家では常に女声だけでなくアニメ声を出すように努力したし、週5回の歌の練習でもアニメソングを優先させた。学校に(プールのない日に)コルセットで行くようになったきっかけもこの特訓だ。どうせ夏休みまで1週間程度だからバレないだろうと思ったのもコルセットを使うようになった理由の一つでもあるけど。
 選曲は、お母さんから話の行っている小父さんが、3週間で間に合うような曲をいくつか探してくれた。もっとも、さすがの小父さんも、アニメ声の出しかたは知らないらしく、どの曲を歌うかはボクが決める羽目となって、優柔不断なボクは、いろんな歌を練習してみて、その中から上手く歌えて踊れそうなのを10日で選んで、残りの10日で特訓ということになった。
 最終的に選ばれたのは4曲、全部で6種類の振り付けで、アニメ声での歌はどうにかなりそうでも振り付けが難しい。いや、動きをアニメのそれにできるだけ真似るだけならどうにかなるんだけど
「見た目に女の子の可愛らしさがないと、意味が無い」
とお父さん(の後輩の言い分らしい)に言われては、基本動作から可愛らしくしないといけない。そうなると歌の練習の時だけではなく、普段の生活でも気をつける必要があって、とうとう夏休みに入ってからの10日間は室内はワンピースやスカートで過ごすようになってしまった。強制されたんじゃないけど、七夕コンサートで使った服がをタンスの横に置かれて
「仕草の勉強なら、それらしい格好でないと実感が沸かないだろうな」
と言われたんじゃ、自主的に着るしかないじゃないの。っていうか、それがちょっと嬉しかったのはボクだけの秘密だ。
 女の子の格好をしたボクを見た母さんは
「それを着るんなら、それらしくしないとね」
と、女の子の仕草を丁寧に教わてくる。時々居間から聞こえてくるお父さんとお母さんの会話からは、お母さんは、ボクの女装特訓にあまり熱心でないと思ったけど、違うのかなあ?
 一番の問題は、クラスメートにどうやってバレないようにするか。歌以外での女装はさすがに恥ずかしい。そして、そうなると、まかり間違って見かけられる場合、とくにビデオを見られた時にに、ボクだと分からないように変装する必要がある。でも
「クラスメートにはバレたくない」
なんてお父さんに言ったら、プロ意識が足りないと言われそうだったので、お母さんに相談した。そしたら、なんと2日後にお父さんがカツラを買ってきてくれたんだ。それは良かったけど
「ほい、これで安心して女の子になりきれるだろ?」
と言われたのに続けて
「よかったな、これで女子トイレにもはいれるぞ」
と言われた時は、クラスの女の子の姿を思い出して背徳感と恥ずかしさで文句をいう声すらだせなかった。もちろん、お母さんが
「何いってるんですか、絶対、そんなことをしては駄目ですよ」
と直ぐに反論してくれたけど、
「おいおい、そんな意味じゃないぞ、スタジオ限定に決っているだろうが。性別隠して撮影する可能性も考えれば、レストランやスタジオのトイレのように男女とも個室式で誰かとかち合う心配がない場所じゃ、実際に女子トイレに入らざるを得ない場合だってあるんだぞ。その場合、子供ということもあって問題にはならないよ」
と言われて、なるほどと思ってしまった。そして、その代わり、ボクは学校以外では立って小便する事が禁止された。学校ってもう夏止みなんだよね。あれ、これって、もしかしたらプールとかで学校に行く日のことじゃなく、二学期のことまでさしているの? 気にはなるけど、そんなことを聞いたら、プロ意識が足りないって叱られそうだし、どのみち、洋式トイレは座ってしたほうが汚れないから、家ではその方が良さそうだしで、黙ってうなずいた。もっとも、お父さんは立ってしているけど、仕方ないや。
 そんなこんなで、締め切り前日に、小父さんのところでキチンと録画した。結局、4曲6種類の振り付けを全部撮影して、店の人に選んで貰うことになったけど、小父さん曰く、曲によっては、本当の女の子以上に女の子っぽい振り付けが出来ていたそうだ。なるほど「可愛い女の子」ってのは作るものなんだね。それは別に可愛らしさをアピールするんだけじゃなく、男の子っぽい激しい動きの中に浮き上がらせるて一生懸命ボーイッシュに振る舞っている女の子」というイメージを与えるのも効果的みたい。
 そして、締め切りの日、お父さんの後輩さんと一緒にコスプレの店にいって動画を渡したんだけど(本人が顔を出すのは礼儀だし)、その動画をみた店主さんと後輩さん(後輩さんもそのとき初めて見た)がすっかり興奮して
「1曲どころか4曲なんて、これは褒美を出さなくっちゃ」
と意気投合して、今度はフリルの、それでもスカート丈の短いコスプレ衣装をボクに押し付けてきたんだ。
「出来れば夏休み中に、その姿を見たいねえ」
という希望付きで。
 これが去年までのボクだったら、えらい迷惑と思っただろうけど、今のボクは新しい振り付けと「女の子の振りの練習」にピッタリだと思ってしまったんだ。可愛らしい服を色々着る口実にもなるし。え? ボク、今、なんか変なことを思わなかった? 思わず顔が赤くなったけど、それを大人の2人は単純に勘違いしたのか、
「恥ずかしいなら無理は言わないからね」
となだめてくれた。こうなりゃ、あとの可能性も考えて、イエスといっておかないと不味いと思い
「いや、やります」
と答えてしまった。その答えが、ボクが夏休み中は家で女の子の格好をすることを意味しているのに気付いたのは、家に帰って両親に話を告げたときだった。

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 【父親の後輩視点】
 
 先輩のお子さんさんが歌うって話を聞いた時は「ここにも子供自慢がいた、うざい」って思ったけど、アニメ声を練習していると聞いて、ちょっと興味を覚え、大人の七夕コンサートで、ちょっとしたコスプレでアニメ声を出す、って聞いて、見るだけなら、先輩への顔も経つし、いいかも、と思って、ちょっと遅刻気味だけだけで出かけてきた。そしてびっくりした。
 男の子だったんだ。女装だったんだ。それがとっても似合っていたんだ。
 父親が息子の女装を支援する例なんて聞いたことがない。そんなにオタク仲間で男の娘を妄想しても、現実にそんな者はいない。高校生では既に体格に無理があり、とはいえ、それ以下の年齢での女装は母親が熱心な場合の小学2年生まで。あとは性同一障害の男の子だけだけど、目の前の男の子は、普通の男の子だ。小学4年の、ノーマルな男の子の女装を両親が支援するなんて、こりゃ、コスプレ界に激震が走る話だ。
 目的がボーイソプラノを最大に生かした歌であることが、全てを納得させる。となれば、是非ともプロモーションをしなければなるまい。早速、行きつけのコスプレ屋に、コンサートの時の写真を持って行って、裏工作をして、その上で先輩を、そこに連れて行く。赤札価格で人気コスプレ衣装を買わせて、その代わりにビデオデビューを持ちかける。同世代の女の子を越える声と歌心があるのだから、あとは振り付けだけだ。でも、質問されること以上のアドバイスはしない。だって、きっとサプライズな魔法少女を演じてくれると信じているから。
 俺の目に狂いはなかった。もたらされたビデオはそれほどの内容だった。こんなものをコスプレ屋の宣伝だけで済ませるのは勿体ない。あらかじめ手配していたとおり、オタク仲間やコスプレ仲間を通じて拡散させる。あ、もちろん先輩には逐次報告ね。だってデビューへの近道に先輩が反対するはずがないから。でも、先輩は一つ忘れている。このビデオ、中身が女の子だと視聴者が誤解する形で拡散しているんだね。だから、翔太くん、君は歌の世界では女の子としてふるわなければならないんだ。なんという萌えるシチュエーションなんだろう。

先輩のアホ! - 夢喰

2017/01/15 (Sun) 20:31:41

これは以前英語サイトで見た女装短編Stuck(http://lvtgw.jadephoenix.org/stories/Stuck01.htm
を下敷きにしています。著作権にかからない程度には大きく改変していますが、原作者に感謝を。

高校の2次元同好会の2つ上の先輩は4人兄弟の2番目で、実家はかなりの金持ちだ。親は名目上は会社重役であるものの、事実上の跡取り惣領で、しかも一族から政治家すら出すほどの家だから、単なる会社重役という言葉では終わらない。そして、この手の実業家によくあるように、この先輩の親・祖父・叔父は悉く「男の家系」を重んじているし、娘は政略結婚の道具としてしか見ていない。だからこそ、男の子を4人も作って確実に後継者を残そうとしている。

ところが先輩ときたら、そんな家系にも関わらず、2次元同好会に入るぐらいのオタクであって、彼女も結婚もめんどくさいと考えている。これには僕も同意する。彼女という響きは良いし、好きな子はいっぱいいるけど、回りの彼女持ちが、彼女たちにものすごく時間を貢いでいるのをみると、現実の女子に幻滅して、とても次の一歩の踏み出せないのだ。取り立ててモテる要素のない僕ですらそう思うのだから、実家が金持ち=優良物件と見なされている先輩にしてみたら、近寄ってくる女は、わがままいっぱいか、下心いっぱいか、その両方で、女子を面倒と思う気持ちは更に大きいだろう。

とはいえ、そんな女たちの中から、実家の繁栄に貢献しそうなのを選んで結婚するぐらいの男でないと、跡取りの一人にはなれない。先輩の実家では「跡取り一人」という考え方には囚われておらず、毛利のように3人が分担して家業を発展させれば良いと考えている。だからこそ、先輩にもお鉢が回るし、実は先輩も、そういう意味での跡取りは目指している。一方で、家業が無理な男子には、実家から切り離して自由に生きさせるという方針もある。それもまた、家業を発展させる為のこつと言えよう。競争制度でなく、絶対評価だから、跡取りの一人と見なすべきかどうかは早めに決めるのが吉だ。その試金石の一つが彼女を作る事である。

当然ながらそれは先輩にも当てはまる。高校時代から彼女を家につれて来るように言われていて、よく愚痴をこぼしていた。そうして、コンパと称して複数同時に呼ぶという安全策を毎年取ってきていた。しかし、自由を求める性格から、高校も大学も、他の兄弟よりワンランク低いところを選んだことが祟って、大学に入っていよいよのっぴきならなくなり、大学2年の正月までに見つけきらなかったら、跡継ぎ候補から外すという最終通告を受けているらしい。

らしい、という噂が本当だと知ったのが、11月の大学祭の時だ。実は、進学希望先の一つ(滑り止め)が先輩の通う大学で、大学の説明を聞きに先輩を訪問した際に直接話を聞いた。クリスマスか、正月。それがタイムリミットだそうだ。
「でも、先輩なら、家業に縛られるより、自由に生きた方がよくありませんか」
と思ったままに尋ねると
「いやいや、ちゃんと家業をやる気だからこそ、今のうちに遊ぶんだ」
という、オタクらしからぬ答えが返ってきてちょっとびっくりしたほどだ。
「高校・大学のワンランクに違いって、なんだ? 寧ろ鶏口となるも牛後となる事なかれっていうだろうが。お陰で、兄弟たちと違って楽に成績を上げているものな。家業に必要なのって、そういう事だと思うんだ。お前だって背伸びして実力以上の大学に入っても何も良いこと無いぜ。」
とアドバイスまでくれたので、へえ、滑り止めの大学でも良いのかな、と思ってしまったのは、担任の先生には秘密だ。

ここまでは格好良かった先輩だけど
「ところで彼女は出来たんすか?」
という肝心の質問には
「まだ1ヶ月以上あるし、この学祭の打ち上げできっと見つかるさ」
と、相変わらず頼りない。口だけ言ってもねえ、先輩、それじゃあ駄目ですよう。

そんなやり取りがあってから、瞬く間に1ヶ月が過ぎて、センター試験まで1ヶ月を切った12月下旬、先輩からいきなり電話がかかってきた。
「ピンチだ、助けてくれ」
聞けば、やっぱり彼女が見つからず、僕の知り合いに「彼女のふり」をお願い出来ないか、ということだ。大学内やバイト先だと、「彼女のふり」では絶対に終わらないトラブルの予感がするので、あきらめたそうだ。そうなると、あとぐされの心配が少なくて、しかもある程度の学力レベルと共通話題を確保出来る高校後輩と思ったものの、具体的には縦の関係のある同好会がらみしか思いつかなかったらしい。そして、その中で、いちばん最近先輩と接触をもったのが僕で、自然に頼られてしまった。大学受験生の年の瀬に頼むなんて、やっぱり先輩は自由人で、跡継ぎ候補から外れるべきだとは思うけど、そこは1ヶ月前に相談した手前、無下に突き放す訳にもいかない。結局、クラスメートの女子に声と掛けてみると請け合って「彼女のふり」アルバイトの条件や報酬を詳しく聞き出した。

「受験生だから厳しいですよ」
と脅したのが効いたのか、なんと、夕食6時間(5時〜11時、移動時間込み)拘束で5万円+衣装化粧代(5万円程度)という破格だ。え、それなら、それこそ援交の連中を引っ掛ける方が良くないか? と思ったけど、そういうグレーな世界は不味いだろう。それに、僕としては、この機会に、以前から好意を抱いている女子に声をかけようと思っているのだ。後ぐされのない人助けで、金儲けで、しかも僕の私利はゼロ。好感度を上げるチャンスだ。よしんば、間違って彼女と先輩がくっついても、僕は「仲人」という名誉を得て、きっとお返しが来る。そんな皮算用をして先輩との電話を終えた。

しかし、現実はそんなに甘くない。センター試験まで1ヶ月なのだ。結局クリスマスに間に合わず、年末補習で声をかけても
「馬鹿じゃないの? この時期に何を考えているのよ」
という返事ばかりで、女子からの僕の評価は地に落ちた。トップの高校からは少し落ちるとはいっても、僕の学校は普通科で、普通に進学を目指す連中ばかりなのだ。

補習が終わって年の瀬となり、僕は先輩に謝りの電話を掛けた。考えてみれば、こんな無理難題を頼む方が悪いし、僕だって「無理だとは思うけど」と念を押してから引き受けたけど、それでも期待に添えないと申し訳なく思ってしまうのはやっぱり日本人だと思う。

そんな申し訳ない気持ちの時に
「じゃあ、君が女装して来てくれない?」
といきなり言われたら、なんて返事ができるだろう。大抵の人は絶句して言葉を出すこともできないだろう
「ほんとに、お願いだから」
「ばれたら諦めるし」
「バイト代も10万円にするし」
「大学に来たらいくらでもおごってあげるし」
絶句している僕に、ぼつぼつと、思いつくことを言ってくる。でも、何よりも僕に響いた言葉は
「だって、2次元同好会でしょ? OB会で英雄になれるよ」
というものだった。そして
「ほんと、ばれたら諦めるって」
というだめ押しに、僕もまた、悪徳洗脳商法で高級品を買わされる被害者のように
「わかりましたよう」
と答えてしまったのだ。

電話を切ったあと、後悔はしたものの、キャンセルは心情的に不可能だ。心を落ち着けよう。大丈夫だ。一番の気がかりは身バレだが、こっちの身元調査の心配は無いらしい。婚約とは異なり「彼女を作る能力があることの証明」であり、テストの対象が僕の人物ではなく先輩のエスコート能力だからだ。そもそも、あまりに早い段階で身元調査をして、もしかしたら有能かもしてない候補者に機嫌を損なわれたら本末転倒だ。なので、向こうは鼻から僕が女子高生だと先入観を持つ筈らしい。しかも、実業家一家の前なので、恐縮してあまり話さないだろうことも了解しているらしい。要するに大きなミスさえしなければ良いとの事だ。

日程もどうにかなりそうだ。僕の家族は明日から1月3日まで田舎に帰っていて、受験生の僕だけがこっちに残る。だから準備が出来る。準備と言ってもネットで調べたりだが、不意に家族は部屋に入ってくる不安がない。家を空ける事に関しても、受験生だから部屋の電気を付けっぱなしにするのが自然で、受験生だから電話を全部留守電にして構わないから、自宅にずっといたというアリバイができる。冬だから夜帰るところを近所に見られる心配も無いだろう。携帯番号に掛かる電話は、家族以外は無視できるし、家族からの電話は、出かける前にこちらから掛けておけば掛からないはずだ。そして、1月2日に決行すれば疲れて女装のまま家に帰っても、家族が帰るまで丸1日ある。

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年を明けて1月2日、午後3時、僕は先輩の2次元関係の同士の更に知り合いという男の所に来ていた。先輩も一緒だ。本職は医療関係で、趣味でコスプレのサポートをしているらしい。コスプレ会で着付師と呼ばれている強者で、彼が素材(僕の事だ)を確認してから今日の女装作戦を決行すべきかどうか判断するらしい。

着付師は、僕をじろじろとみて
「うーん、ちょっと肩が面倒だけど、手首も指も細いから、これならいける、問題ない」
と一人ごちた後、
「まあ、とにかく、時間がないから手分けして剃るぞ」
と言って簡単なシャワーの後に、バスタオル姿で作業台に座らされた。女装素材と認められたお陰で10万円の報酬と先輩の人助けが出来るのは嬉しいけど、報酬のことを除けば悲しくなるものがある。ともあれ、脱毛クリームを全体に付けた後、足は先輩、背中は着付師、顔や脇は自分で剃って行く。ある程度は昨日のうちに剃っているので比較的早く終わる。ちなみに陰部も完全に剃るそうだ。尻を丸く見せ、同時に男性器を隠す為の特殊パンツ(偽尻ガードル)がずれ落ちないようにする為らしい。

剃り終わってシャワーで流した後、バスタオルを巻いて外に出ると、今度は作業用の安楽椅子に座らされた。安楽椅子で足を暖かくしているせいか、眠い。ぼんやりとしているうちに、最後の仕上げと称して、ハンド式機械で全身をマーサージして行く。視界の先に黒いのが見えるのは毛の残りだろう。顔も同じように処理される。もみあげと眉毛が減っている感触がするが、目をつぶった状態の安楽椅子が気持ちよいので、どうでも良くなってくる。

毛の処理が終わると、再度シャワーをした後に今度は、肌を白く見せる為のクリームだ。女性の白さと男性の白さは少し違うらしく、あとから装着する偽乳などの色と矛盾させない為に必要らしい。それらの作業が終わると、ようやく、体型を変える為の補正具を着用する。まずは首(喉仏)まで完全に覆う肌色の7分袖のタートルシャツ風コルセットだ。ただし、素材は人工皮膚みたいな冷たいながらもリアルな肌触りで、乳首部直径5cm程度だけが穴があいている。柔軟性はあるようなので一気に着ると、思ったよりかなりきつい。脱ぐのに一苦労しそうだ。

「感触はどう? 空気とか入っていない?」
着付師の言葉に従がって、全体をチェックする。スポーツウエアのように肌に吸い付いた感じが全体に広がり、皺も無く滑らかに覆っていると思える。しかも締め付け感が馬鹿にならず、その点がまさにコルセットだ。
「大丈夫みたいです」

シャツの横から目立たない色の布(?)がひらひらしているのが気になる。と、それを着付師が持つや
「はい、息を吐いて」
と言って、布をシャツに更に巻き付けた。マジックバンドと同じ? と疑問に思う余裕もなく、ぎゅうぎゅうに締めてきて、うわ、息が出来ない! 

息苦しさに閉口しているところに、同じような素材の、胸近くから膝まであるパンツ(偽尻ガードル)が出された。肛門部に必要な穴がいていて、あと陰部は女性のそれと同じ感じにみえる。ちょいと待て。10秒以上固まって、やっと次の言葉を絞り出せた
「そこまで本格的な奴は要らんぞ」
というかお断りだ。
「なに言ってんだ、女装グッズが陰部を真似るのは標準だろうが。そうでない方が高いんだぞ」
と着付師がたしなめる。いや、そんな意味じゃなくて、もっと簡単な女装とかってあるはずだよね。パンストにタオルを入れるとか、普通のガードルとか。こんなところに金を掛けるなら、もっとアルバイト代を弾んで欲しいって、あ、10万円も貰うんだった。ならいいか。文句を言っても、どうせ、この変態グッズから逃れられるとは思わないし。

偽尻ガードルの中には管みたいなのがあって、
「あ、そこからおしっこを出すので、入れてね」
と言われるままに装着する。肌に吸い付く感じはコルセットと一緒ながらも、きついのは上下の両端だけで、臀部はゆるく、素材に柔軟性があるせいか、違和感が少ない。玉もすんなりと収まっていてタックではないらしい。これでごまかせるなら楽だけど、勃起したらどうしよう、と思ったら、本当に勃起し始めた。不味いと思ったけど、股間を見ると平坦なままで、代わりに勃起部の根元が折れた感じで痛みが走るが、そこまで酷い痛みではない。
「あ、柔軟剤が中に入っているから大丈夫だよ」
なに、その柔軟剤ってのは? そう思っていたら、ガードルの最上部にあたるウエスト部から肋骨にかけてきつく締められた。さっきの布と同じ感触だ。行き場のない内蔵とが圧迫されるのを感ずる。更にその反動で、臀部の肌が横と後ろに引っ張られるのを感じる。どうやら、単なるふにゃふにゃの布(シリコン? 人工皮膚?)ではなく、ワイヤーみたいに剛性のある素材らしい。

そんな疑問の答えを求めて下をみると、魅惑的な腰が目に入った。腰というか尻というか、そこは横にも後ろにも広がって、しかも柔らかそうな見た目だ。しかも豊かな尻の位置というか、足の付け根が少し下がって、きつく締められた膝と相まって、膝から腰まで奇麗に広がる完全に女の太腿を作っている。その分、足が短くなるが、日本人の女の子の太腿ってのは短いのが普通で、却って自然に見える。これならスカートどころかスパッツでも男とは分かるまい。ちょっと歩きにくくなりそうだけど、それは歩幅を女の子のように小さくするのに役立ちそうだ。遠目に肌と区別のつかない色であるところも見事で、パンストさえ履けば、皮膚とガードルの継ぎ目も分からなくなる筈だ。なるほど、ここまで見事な偽尻ガードルなら、女性器まで付けてしまうのも自然だと納得する。納得はするが、それを今回自分が装着するとは想像出来なかったし、今でもいやだ。2次元研究会ですら「キモい」「変態」と罵られるレベルの女装グッズだからだ。同好会の連中には単に偽尻ガードルとだけ言っておこう。

上半身を目を移すと、喉仏は奇麗に押し込まれ、肋骨が少しだけ細くなって、なにかゆったりした服を着れば、そのまま女装になりそうな気がする。そのくらいには女装にも詳しくなった。正月に色々調べたのだ。それは良い息抜きになって、勉強がはかどったのは不思議だが。そういえば、さっきの巻き付けで胸の開口部がひろがって直径が7cmぐらいになっている。そして、そこから余った肉がせり出している。おっぱいにほど遠いけど、プラジャーをすれば実体感を演じる事ができるだろう。なるほど、考えたものだ。でも、これってそのまま写真に撮られると恥ずかしいレベルのコルセットで、こっちも、2次元研究会にすら報告できない。

そんな事を考える僕の余裕を見たのか、着付師は下半身をタオルで隠し、コルセットのさっきの補強布(?)を外して
「はい、もっと息を吐いて」
と、上半身を更に締めてきた。しかもさっきと違って下端部まできつく締めて、ガードルの上から圧迫を重ね掛けして、みごとな括れを作っている。これならガードルがずれ落ちる事はないだろうが、脱衣は面倒そうだ。補強布を外すこと自体は、さっきの着付師の手つきから簡単そうだがけど、開閉部が横にあるので、意外と手こずるかもしれない。まあ、昔みたいに、背中の編み上げでないから問題ないだろう。ちなみに胸の開口部は更に広がって8cmぐらいで、皮下脂肪が更にせりあがっている。

きつく締められた為に呼吸が大変なので、あまりものを考える余裕がない。呼吸に集中していると、頭にすっぽり何かがかぶさった。もちろんウイッグだ。ずれるのが怖い奴だな。
「毛の根元に静電仕掛けで裏側がくっつくようになっているんだ」
化学物質で静電気を髪の毛に発生させているらしい。外し方は教えてもらって、実際試したものの、
「これ、外すのは簡単だけど、再びくっつけるのにはコツがいるんだよ」
と、最後まで外さないように念を押された。確かに2度目の装着は手間取っている。静電気って厄介なんだな。

着付師が先輩に
「胸はどのくらいが良い?」
と尋ねている。
「貧乳で良いなら、このままでもいけるが、まあ、あったほうがいいね」
着付師に言われて、上半身を鏡で見る。さっきの2度目の締め付けで、確かに胸部の穴から盛り上がった皮下脂肪と肋骨の形やサイズとのバランスが良くなっている。肋骨の幅自体はあまり変わらないものの、少し薄くなったみたいで、それが効いているようだ。例えば、大胸筋がほとんど消え、鎖骨が浮き上がり、それらが胸の存在感を引き立たせている。その分、肩も万力で挟まれた感触がして、実際、見た目にも肩の厚みも幅も狭くなって、まさに女の細いなで肩となっている。確かに、このままで超貧乳の女装はいけそうだ。なんか、凄いな、と思っていると、そんな疑問の答えるように
「肋骨をしぼると、肩が下がるから細く見えるんだよ」
と着付師が説明してくれた。なるほど、さすが変態グッズだ。コスプレの業の深さを改めて感じた。

「うーん、背もあるしBカップぐらいかな」
2次元の申し子たる先輩は貧乳ヒロイン派だが、僕の身長は168cm、女子の平均を大幅に越えるので、貧乳というのは、よほどスポーツをしていない限り不自然だそうだ。そこでBという数字らしい。このことからだけでも、今夜のイベントに先輩が真剣であることが分かる。まあ、そのくらいでないと、僕も割が合わない。脱毛されて、シャツ型の変態コルセットをきつく着けられて、挙げ句の果ては女性器を模した偽尻変態ガードルだ。黒歴史そのものだ。

着付師の持ってきた偽乳は想像以上にリアルだった。昔から女装グッズの中でも一番需要が高かった故に、性能が上がっているという説明を聞いて納得した。貧乳であれ巨乳であれ男の夢だ。欧州アフリカでは尻派が主流だそうだが、日本では胸派が主流だから、本物と見まごうほどに見た目も性能もあがるのは当然だろう。外見だけでなく、揺れ具合も、感触も。着付師によると、生体類似繊維を多用して、偽乳の乳首に与える刺激を実際の乳首まである程度伝達するようになっているそうだ。だから、さっきのシャツコルセットは乳首部が5cmほど開いているらしい。

肌に電気信号用のクリームA、シャツコルセットに接着剤Bをつけて、偽乳を胸の上にくっつける。まず右、そして左。ここまできたら、胸の観測を手で確かめなければ男じゃない。
「おい、おまえ楽しそうだな」
という先輩の声に、ちょっと顔が火照りつつも
「先輩、2次元同好会として、ここで胸を揉まなかったら、逆に犯罪ですよ」
と反論する。あまりにもハイテクなので、当初の予想に反して女装がちょっぴり面白くなったのは事実だけど、僕はあくまで被害者面をすべきで、面白さを認める必要はない。胸以外でそんな様子を少しでも見せたら、バイト代がケチられる可能性があるからだ。なんたって、これだけの女装グッズだ。これに服をいれれば、それだけで10万円近くするのではあるまいか。バイト代と合わせて20万円。いくら将来が掛かっているとはいえ、学生が気楽に出せる金額ではない。

偽乳の感触を確かめたからには、次は偽尻ガードルの女性器の感触も確認したくなってくるが、まあ、それはシャワーかトイレまで我慢だな。と、そこまで妄想して、さすがにエロが過ぎたと反省した。感づかれたらヤバい。話題かえなくっちゃ。
「なんだか、接着剤らしいのを使ってましたが、これってどうやって外すんですか?」
リムーバーってきっとあるよね。シンナーかな? 最悪ハサミでコルセットごとという手もあるけど、もったいなさそうだし。
「今夜シャワーを浴びれば大丈夫。念のためにリムーバーも渡しておくけど、こっちは時間がかかるよ。これを継ぎ目から垂らせば少しずつはがれるから。その時に短気を起こしてコルセットごとハサミで切れるのは出来ればやめてね。もったいないから」
うん、大丈夫みたいだ。

説明と同時に胸の上にもバスタオルをかけられる。リアルに近い胸だから人目に晒しちゃ駄目らしい。女装といえども、きちんと「恥ずかしい」と思わないといけないそうだ。今の僕の姿を、本当のボクの生まれた時の姿って思うぐらいじゃないと女装演技は失敗する。説教されるまでもなく、確かにそうだ。10万円の報酬と、先輩の未来がかかっているのだから、このくらいの自己暗示は必要経費だろう。そして、そう思った瞬間、胸を晒す事が、先輩に対してすら恥ずかしいと感ずるようになった。だから、バスタオルできちんと胸と腰を隠す。そして、隠せば隠すほど、肌を晒す事が恥ずかしくなってくる。畜生、これはつらい。ちょっと甘く考えていた。

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「下着は自分で選ぶんだね。ちなみにアウターはこれ」
と言われて手渡されたのは、水色と白の斑の膝下スカートと、白と青のまだらの長袖チュニックと、その下に着る水色のフリル付きキャミソール(むかしスリップと言っていた長めの奴)。ハンドバグッグは普通に茶色。なんだよ、これじゃベージュか水色の下着以外にチョイスがないだろ、バスタオルで胸と腰を隠しながら着替え室にはいると、そこには異なるフリルとデザインの下着セットがならんでいた。実家への紹介というイベントを考えると、全くシンプルなのはさすがに不味そうなので、すこしフリルのあるやつを選ぶ。

しかし、サイズがどれも想像より小さい。
ブラジャーのサイズはちゃんと予習している。昨日測った僕のアンダーバストは80cm、ウエスト74cm、チェストは88cm、普通に細い18歳男子だ。なのに、置いてあるブラジャーはアンダー70か75。あ、コルセットで絞ったせいだ。そう思って、横のメジャーで測ると、なんとアンダーは元々のウエスト並みの73cmで、バスト86cm、チェストは84cm。ちなみにウエストは68cm。息苦しいのも当たり前だ。無理の無い75Bでをチョイスして着る。男の肩は回らないから、前後ろでホックを留めて、後ろに回し、偽乳をカップに入れると、乳首に緩い感触が走った。げ、本当に偽乳首と乳首が少しだけ連動してやがる。今夜は帰って乳首と遊ぼう。外すのはそのあとだ。

サイズの合うブラジャーが決ったところで、それにマッチするショーツを選ぶ。ヒップは94cm(10cm水増し!)あるけど、ウエスト68cmを考えてMだ。ウエストは4cmしか縮んでいないけど、細い部分が上に広がり、尻が縦サイズも幅サイズも奥行きも広がったので数字以上にくびれている。とはいえ、あとで調べたら標準サイズそのものだった。サイズ測定ついでに、陰部を少しだけ触ったが、柔らかさや湿気があまりにリアルでめまいがした。これを夜楽しむなんて言語道断、変な世界に目覚めそうなので絶対に止めておこう。

あとは普通に着る。パンストは普通にベージュ。それぞれ新しく着るたびに少し興奮するが、仕事と割り切っているので事前に心配したほどのパニックにはなっていない。いや、さっきから勃起の感触がずっと続いているけど、それはそれだ。何度も勃起しているとはいえ、無理矢理後ろに曲げているせいか、テッシュ一枚で済む。というか、仕方が無いので、実は生理ナプキンをショーツのクロッチにあてている。念のためにデザインがややおとなしいショーツとナプキンの予備をハンドバッグに入れる。なるほど、女の人にハンドバッグが必要な訳だ。

ちなみにトイレだが、何度もシャワーを浴び、最後のシャワーの直前にトイレに行ったせいか、尿意はない。そして、服を着る直前に
「これ、おしっこを止める薬だから」
と錠剤を渡されている。なんでも長距離航空便で身障者などが使う薬で、たとい膀胱を圧縮されていても、6時間ぐらいは全然大丈夫だそうだ。

着替え室を出ると、すでに5時に近い。1時間後にはここを出ないといけないが、残るは化粧だけだ。再び作業椅子に戻って着付師に委ねる。着付師は、いちいち説明してくるが、僕に女装趣味はないから、気持ち良くうとうとする。そうして出来上がった僕は、顔も体型も女の子だった。なんと、喉の部分も皮膚らしくなっていて、その色合いが顔に続いている。丁寧にみても「コルセット」と皮膚との境界が分からない。

仕上げは靴だ。幸い洋食なので、靴を脱ぐ必要がない。しかも今は冬。という訳で、サイズ24.5の低めの革靴、要するに女子高生が登下校に使う奴を使うことにした。女装とヒールの両方を注意するなんて初心者には無理だから、普通の靴で済ませる。そもそも、先輩との身長差が8cmしかないわけで、ヒールなんか履いたら高さのバランスが悪くなる。男をたてる女は、背の高さでも立てるべきなのだ。

肘を閉じ、膝を閉じる。そういう仕草の指導を最後に受けたが、その際に着付師が
「まあ、そのコルセットとガードルは肩関節と股関節の向きに制限を掛けているから、ちょっと練習すれば自然に振る舞えるようになるよ」
と打ち明けてくれたとき、女装グッズの進化にすっかり呆れた。そういったグッズの中には変音スプレーなるものまであった。なんでも「コルセット」の喉仏を抑えている部分を内側からさらに圧縮して、低音が出るのを抑えるそうだ。コルセットで肺が抑えられることも重なって、か弱い、メゾソプラノの声しか出せない。

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タクシーで予約された貸し切りレストランに向かう。立食形式のスターターから始まって、席についてのディナーとなる。親だけでなく、叔父叔母も参加するというものだ。他の季節の「彼女紹介」なら家族だけのこじんまりしたものだが、今日は親戚の新年会もかねているので、貸し切りらしい。
え、そんなこと聞いてないぞ、
と先輩のポンコツぶりに突っ込みをいれるが、まあ、オタクの鏡だから仕方ない。直前になってハードルが上がったものの、逆にお陰で準備での不安が少なくて済んだと思えば、これはこれで良いのかも知れない。

実際、ぼろを出さずに夕食は流れている。立食歓談で、ちょっとつまづきかけて、キャミソールが背中越しに見えるアクシデントがあったものの、そこで現れた体型が女性の丸みを帯びた腰尻ラインだったので、逆に女装の自然さをアピールする事になった。なるほど、こういうアクシデントを考えて、あれだけ徹底的な体型補正をしたのだなと納得した。あと、肘や膝が自然と女の子っぽくなってくれているのも、あのマニアックな装備に感謝だ。

でも、はしたなかったのは事実。女の子らしく、動きは小さく。女の子らしく、動作はゆっくりと。下着を見せる事のないように。胸の開いたチュニックからブラジャーが見えないように。ここはディナー、ランチと違って見せブラはNGだ。僕は女、違う、私は女。私は少女、私は女子高生。そう暗示をかける。それが女装演技の第一歩だ。時給1万円強の仕事だ。

食事とデザートが終わると、食後酒がやってくる。これを境に人々が自由に席を替わるのは、忘年会と一緒だ。先輩の世代の半分は、ラウンジで立ったまま酒を手に話をしている。ここまで上手くいったので私はほっとする。意識は僕でなく私。

弛みは先輩にもあったのだろう。横に立って同年代の従兄弟と話をしていた先輩が、急にバランスを崩して、アルコールが私の肩にかかった。白青地にオレンジの染みがひろがり、同時に下着が少しだけ透けてくる。
「あっ」
ととっさに出た声は、幸いにして小さく、女の子っぽい「きゃ」で無い事はとがめれなかった。でも、そういうことを後から反省しているうちに、回りが
「あら大変」
「うちの馬鹿息子が粗相をしおって」
「嫌いにならないでくだしまし」
と次々に声がかかり、女性たちが手ぬぐい等で濡れたところを拭こうとするのに対して反応するのが遅れてしまった。気がつけば拭う手は偽乳にも届いている。やばい、と気付き、慌てて
「あ、大丈夫ですから」
と自分で拭い始めた。

あの偽乳に気付いていないか気になって、汗が出始める。こんな時は、と長い長い30秒を考えた末に、私はお手洗いに向かった。貸し切りなので、女子トイレで問題ない。小さなレストランだから個室1個だけだ。困った時のトイレ。女性がなぜトイレを大切にするのか分かるように気がした。とりあえず、ぬれて透けたところを出来るだけ乾かし、身だしなみを整えて、さっきので偽乳がバレていない事を信じ直してトイレを出ると、参加者の一人が、買ったばかりのブラウスとキャミソールを手渡してくれた。初売りの買い物の帰りらしい。
「いや、そこまでして頂く訳にはいきません、洗えば落ちますし」
「まあ、うちの従弟のそそうなんだから、取っときなさいよ」
という押し問答の末、先輩の
「もらっとけ、もらっとけ」
という言葉(ちなみに先輩は、この言葉遣いに対して従姉連中から非難されていた)もあり、着替えることになった。レストランが貸し切りなこともあって、更衣室で着替える。いつ誰が部屋に飛び込んで来るのか分からないという不安で、落ち着かなかったが、よく考えたら、こういう場の女性たちが、更衣室に飛び込むようなアニメ的状況が起こる筈はない。

折角だから服を軽く水洗いする。元々の予定では、下着とキャミはともかくチュニックとスカートは着付師に返す予定だったが、そういう訳にもいかないだろう。明日先輩と相談だな。って、先輩なら、何も考えずにそのまま持っておけといいそうで怖い。やぶ蛇だよな。なので、クリーニングに出して着付師に持って行こう。確か着付師は3日4日は旅行で5日に戻るみたいから、ちょうど良い。

そんなアクシデントもあったものの、なんとか食事とデザートを無事終えて、私は先輩にタクシーで送ってもらった。あれ、今、なんか変なこと言ったかな。あ、ずっと私って言い続けて、私は女の子って自己暗示していたから、イベントが終わっても、ついつい私って思ってしまったんだ。でも、皆を騙せた成功で気分が良いんで、このままもう少しだけ演技を続けよう。

タクシーの後ろ座席で、先輩が私の手に封筒を滑り込ませた。恐らく報酬。運転手がバックミラーを見ていない事を確認して素早く中身を確認する。その直後、先輩が耳うちしてきた
「次の機会もよろしく」
なに言ってんだ、この馬鹿野郎。

家の前で車を降り、素早く家に入る。玄関は電気がついていないし、冬で何処の家も窓を閉めているので、音も聞こえまい。帰着した私は、やっとリラックスした気分になった。とはいえ高揚した気分で、未だに女の子モードを楽しんでいる。歯磨きで、鏡で自分の顔と上半身を見て、もったいないと思う気分がますます強まったからだ。体型だけでなく顔もだ。睫毛等はもとより、唇が少し突き出て、その分小さくなっているし、目もぱっちり開いて、顔の目立つ輪郭も丸っぽい。僕の顔なのに、僕の顔だと分かるのに、女の子の顔になっている訳で、着付師の腕のすごさに改めて感心した。これを直ぐに戻すのはもったいない。

さっき、先輩の事を馬鹿野郎って思ったけど、これって良いバイトだよな。受験が終わったら、報酬次第では、もう一回ぐらい付き合っても良いかもしれない。関係が2ヶ月以上続けば、親御さんも先輩の事を本格的に認める筈だからだ。それで先輩は「次の機会」って言ったのだろう。ということは、その時に為の練習として、もう少しだけ女の子の演技を続けてもよいよね。そう、自分自身に女装の言い訳をする。だから、寝るのも、この体と、ショーツとブラとキャミで。でも、その前に、胸を揉んで、あそこもちょっとだけ触って。当然、シャワーは明日に延期。

結局、興奮しすぎて、寝たのは3時。興奮を鎮める為に受験勉強を1時間ほどしたら、やっと尿意が来たので、それでトイレに行ったら、普段も座ってしているというのに、やっぱり興奮してしまって、更に1時間受験勉強をする羽目になってしまった。ともかく、寝坊で9時に目が覚めた。

家族が戻るのは夕方7時だ。夕食は田舎から持って帰ったお節と、私の正月用のお節。だから、夕食の準備が不要ということで、夕食前ぎりぎりの7時で戻ってくる。取り外しとかハプニングとか考えても午後4時まで、つまりあと7時間は女の子でいられる。とりあえず、ショーツが汗をかいているのでハンドバッグの予備に変える。ブラジャーは予備なしだ。

女の子の朝は洗面から。化粧は昨日のままで崩れていない。次が朝食。女の子モードで、朝昼兼用の食事をかわいらしく盛りつけよう。皿洗いは、まあいいや。最低限で。親も期待していない筈だし。そのあとは勉強勉強。もっとも、一軒家の常で、外から見えてしまう区画が結構あって、食堂に降りる時はジャージを着て帽子襟巻きをしないと不味い。

それで気付いたのだが、ジャージが合わない。尻が大きすぎて履くのに苦労する割に、ウエストがだぶだぶでズボンの上の方が垂れ下がるし、上は、ぶかぶかだ。おっぱいがあるといっても、元々のチェスト88cmが、コルセットと偽乳でチェスト84cm、バスト86cmになったのだから当然だろう。だが、それ以上に不思議なのが、ブラジャーがぶかぶかな気がするのだ。おかしいと思ってメジャーで測ると、アンダー71cm、バスト85cm、チェスト83cmとなっていた。ちなみにウエストは68cm、ヒップ94cmで、ヒップを除いて昨日より1cm〜2cm更に縮んでいる。呼吸の苦しさになかなか慣れないと思ったらそういうことなのか。だてにコルセットとかガードルとか名付けられている訳ではなさそうだ。これなら70Bか70Cのブラジャーにすれば良かったと後悔するが、そんなのは次の機会でいいだろう。

昼過ぎに先輩から電話がかかってきた。まあ、当然だ。
「もしもし」
と答えると
『**君をお願いします』
と妙な反応だ。
「私ですが」
あ、私って言ってしまった。家族が帰る前に戻さなくっちゃ
『あれ? 風邪でも引いた?』
馬鹿な私、じゃなくボク。声が戻っていない? コルセットの喉を抑えているからあり得る。ここはごまかさなくっちゃ。
「そのようです」
『ごめん、昨日のせいだね。じゃ、受験頑張って』
先輩焦っている。ヘタレで可愛い。ってそれは女子高生の発想だ。ボクは男に戻らなくっちゃ。そういえば家族が電話する事もあるよな。『遅れる』とかいう内容で。でも留守電で十分か。

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勉強に集中して気付けば5時。あまりに女装グッズと女の子の下着に慣れてしまって、忘れていたけど、男に戻らなくっちゃ。まずはウイッグ。昨日外したところを触るけど、あれ、皮膚との境界が分からない。もしかして、昨日の最後の化粧で分からなくした? あり得る話だ。お湯で外れるんだっけ。いや、それは確か偽乳の筈。なら、先に偽乳か。たしか、リムーバーかお湯だったよな。

まずはブラジャーを外す。肩の柔軟さが良くなったのか、ブラジャーが楽に外せる。幸先が良い。次にハンドバッグからリムーバーを出したものの、偽乳の境界がコルセットに癒着しきってわからない。昨日の夜寝る前は確かに継ぎ目の感触があったのに、それが消えているのだ。とりあえず、目測でおっぱいがふくれ始まっているところにリムーバーを垂らすものの、上手くいなかい。爪でこするとかゆみのような軽い痛みだけがあって、継ぎ目の感触は無い。最新のセロテープみたいに完全な継ぎ目なのだ。

焦った僕(そう、焦ったお陰でやっと僕モードだ)は、コルセットごと偽乳を外すべく、脇の補強布部を外そうとするけど、こっちも継ぎ目が分からない。補強部で圧縮されたままじゃ、コルセットをシャツのように脱ぐのも到底無理な気がするので、上半身は後回しにして偽尻ガードルに意識を移す。しかし昨日、コルセットを巻き直した時にガードルの上からコルセットをきっちり留めたので、コルセットを外さない限り、ガードルも脱げない。しかも、コルセットとガードルの継ぎ目も分からなくなってしまっている。昨晩は確かに残っていた継ぎ目が消えてしまっているのだ。要するに一晩で、偽乳偽尻付きのスーツを首の上から膝肘までかぶってしまっている状態になってしまったらしい。

心を落ちつけろ。まずウイッグだ。昨日の場所の引っ掻くて探り当てよう。そうして爪を立てたら、皮膚に鈍いながらも痛みが伝わってきた。そういえば合成生体繊維を皮膚につなげるって言ってたな。それって乳首だけでなく髪もなのか? そうなのか? 現に髪に違和感が無い。ウイッグの下がから蒸れる筈なのに、それがないし、帽子を通して髪の毛が普通に感じる。嫌な予感をもって髪の毛を引っ張ってみると、なんとなく自毛が引っ張られている感じがする。

よし、深呼吸だ。髪の毛は最悪自分で切ればよい。時間はある。問題はコルセットだ。もう一度、脇の継ぎ目と偽乳の継ぎ目を探す。鏡と触覚の両方を総動員だ。見つからない。双方の見繕った場所にリムーバーをかけるが、やっぱり変化がない。今度はコルセットとガードルの継ぎ目を探す。これも見つからないし、リムーバーも効果がない。

どうやら、本当に肘から膝まで覆うオーバーオールの状態になっているみたいだ。同じ材質だから癒着したと考えるのが自然で、だからこそ、コルセットの補強部も分からなくなっているのではあるまいか。となると、シャワーを浴びても駄目かもしれない、という嫌な予感がする。顔と掌に汗を感じる。その場合は、ハサミで切り開くしか脱ぐ手段がない。幸い、肘と膝の境界だけは、触覚の感触のわずかな違いでわかる。目には全く見えないし、ちょっと触っただけでも分からないから、たとい肘や生膝を出す格好でも女装がばれる事はないだろうが、ハサミを入れる分には面倒だ。まあ血まみれで癒着した絆創膏をはがすよりはマシだろうが。

でも、ハサミは最終手段だ。まずはお湯だ。偽乳を外すのにシャワーを浴びろといわれた以上、今の状態でも案外簡単に外れるかもしれない。そう期待して脱衣場に入る。そこで裸の自分を見て、そのスタイルの良さに驚いた。85-66-94とはそういうレベルだ。もったいないと一瞬思ったけど、今はそんな状態ではない。シャワーを10分ほど浴びて、偽乳やウイッグが緩むか調べる。顔もごしごし洗って睫毛を引っ張る。

シャワーをいくらしても、何も外れる様子が無い。リムーバーか? あるいはシンナーか? あるいはお湯が足りないのか? 顔のほうも、化粧(といっても進学校としてはおかしくない程度の化粧だったけど)こそ落ちたものの、睫毛が長いままだし、目は開いたままだし、唇はサクランボみたいで、肌も美人の白さのままだ。

風呂にお湯をためている間にリムバーを試すが、それも効果がない。洗面所で見つけたシンナーも全く効果がない。それは顔もそうだ。そうこうするうちにお湯がたまったので、風呂に入る。掛かり湯で、股間まできちんと洗う。毛の全く無い子供の股間だが、それでも女性器は開いている。おしっこで股間を拭いた時に、感触すらあった。鬼頭の感触とは違っていたが、それはガードルで保護している為だろう。そして、この開口部にガードルを脱ぐための突破口があるような気がするが、確認するのが怖い。というのも、この無駄にリアルなグッズだと、よりヤバいで、指を突っ込むと取り返しのつなかい快楽に目覚めてしまうのではないかという不安が残るのだ。だから、それは最終手段だ。まずは入浴だ。

入浴は何も解決しなかった。それどころか、ガードルやコルセットのような「異物」という感覚が消えて、なんとなく裸の感触なのだ。それでいてコルセットの締め付け感だけは残っている。
『逆効果』
という恐ろしい考えが頭をよぎる。慌てて風呂の中で、膝と肘の境界を探す。さっきは確かに「頑張ればめくれそうだ」という感触があったのに、今や「これを剥がすにはハサミどころかナイフでも難しいんじゃないの」というぐらいに皮膚に癒着しきっている。そして、見た目には、近くからみてすら、まるで完全に溶け混じったかのように、皮膚と区別がつかない。

急いで風呂から上がって、部屋にもどる。既に6時半。あと30分か1時間で家族が帰る。乾いた体で、改めて継ぎ目を探すが、膝と肘にわずかな微かな感触を感じるだけで、ほかは全く分からない。とりあえず時間切れ対策として、女物の服を全部ビニールに包んで引き出しの一番奥に入れる。それからハサミ片手に三たび境界を探すが、とてもハサミが入りそうにない。

最後の頼みの綱は着付師だ。住所から電話番号を割り出して、電話するものの、留守電で繋がらない。仕方ないから先輩に電話する。
「もしもし**ですが」
『風邪は大丈夫かい?』
「まだです。それはそうと昨日の着付師に連絡取れませんか」
先輩は何も疑う事無く、携帯の番号を教えてくれた。よかった。始めからこうしておけば良かったんだ。

着付師に電話すると、留守電だったものの、折り返してくれそうなので待機する。既に時計は7時ちょっと前。いつ家族が戻るか分からない。だから、待っている間に、男物の服を着る。一番小さなTシャツで胸を潰して、その上からTシャツとジャージの重ね着で、一見では女体と分からないようにしている。髪はまだ切っていない。というのも、この体と声では髪があった方が自然だし、いつでも切れるからだ。家族には友達が現担ぎでウイッグを薦めてきたとでも言えば良いだろう。運が良ければ外してくれるかも知れないし。ごまかせないのは声だけだが、これは風邪気味と言い訳すれば、マフラーで乗り切れるだろう。

そこまで準備したと所で、着付師から電話があった。症状を説明すると、
「え、24時間着っ放し?」
と呆れられた。
「だって疲れていたからそのまま寝てしまったんですよ、継ぎ目は昨日の段階では分かっていたし、外すのに時間がかかりそうだったから」
嘘も方便だ。
「体質によるけど、ウイッグは12時間以上着けてると外れにくくなる人もいるよ。うちに来たほうが良いね」
「コルセットもガードルも同じ材質だから、体温の状態だとお互いに癒着するんだよ。しかも汗を吸って収縮もするんだ。だから体温で12時間を過ぎるとはがすのが難しくなってきて、24時間もたったんじゃ、完全に一体化だね。素人だとハサミで切らないとむりだよ」
「偽乳はお湯だけで良かったんだ! 汗を吸った状態で先にリムーバーを使ったら、化学反応でくっつきやすくなって、そこにお湯が加わるとコルセットと偽乳が完全に同化ちゃうこともあるよ」
「風呂で膝と肘が分からなくなった? もしかして、手にリムーバーが残っている状態で触らなかった?」
あ、あり得る。でも、それならちゃんと説明をしろって。
「何度も説明したのに君は寝ているから、依頼者のほうに説明しておいたけど、彼から説明はなかったのかい?」
先輩のアホ!

ともかく、着付師のところで外してもらうまではこのままらしい。早くて2日後。そして、その間にコルセットもガードルも汗のせいで段々伸びにくくなって、下手すると脱げなくなるらしい。憂鬱だ。と思った時
「ただいま」
という声がした。2日近くごまかす事が出来るかどうか?

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家族には速攻ばれた。体型はともかく顔が完全に「美人」だったからだ。しかもウイッグ。声はメゾフソプラノ。そうなれば、体つきも吟味されるのは当然で、母親が僕の部屋の来るなり
「ちょっとジャージを脱ぎなさい」
と言われた。女の子になった訳ではなく、あくまで女装だ言い張ったが、この完璧な女装を信じてもらえる筈も無く、いつまでも「そっくりさんの女子高生」による替え玉だと思われた。先輩から貰った服や下着も母親に提出して説明しても無理。それでも記憶は完全に僕なので、結局2日後まで猶予となり、その間は弟の目に毒ということで部屋に軟禁となった。それでも、心配して替えショーツとスポーツブラジャーを差し入れてくれたのはやっぱり母親というものなのだろう。

2日後、無事に全部外してもらったが、だからといって体型が完全に戻ったわけではなかった。丸3日間の女装グッズ装着で、上半身が細くなり、余った肉が少しだけ胸と尻に集まって、肘や膝の動かし方もちょっと女っぽさを残してしまってる。要するに、そのまま女装出来てしまう体つきなのだ。少しずつ戻るらしいけど、全治1週間と言われた。あと顔や皮膚が白くつややかになった分は、不健康な生活と日焼けをしないと戻らないと言われた。まあ、これは仕方ない。それより問題なのが、グッズを外す時に、体毛が大量に持って行かれたことだ。そう、脱毛なのだ。冬だから良いけど、これが夏だったらと思うとぞっとする。まあ、そういう人向けのグッズらしいから仕方ないが。

家では、やっと僕だと認めてくれた母親が、女物の服や下着を僕に見せつけて
「これどうするの? 女装なんてしたら女の子にモテなくなるわよ。でも、もったいないわよね」
と両方の意見を出してきて僕に選択を迫る。何と言っても、服も下着も多いのだ。着付師のところで着た服(長袖チュニック・キャミソール・膝下スカート)は
「服代は既に依頼者から貰っている」
と突き返されたし、夕食での先輩の粗相のあおりで貰ってしまったブラウスとキャミソールもある。下着だって、ショーツ4枚(着付師2枚、母2枚)とブラジャー2枚(着付師1枚、母1枚)、パンスト2枚(着付師1枚、母1枚)ある。それら大量の服を前に、僕はたじろいでしまった。下着を除いていずれも1度しか着ていないのだ。処分するのはもったいない。

3日前までの僕なら、それでも無条件で
「金輪際女装はしない」
と言っただろう。でも、今回の「演技」のスリルと高揚と勃起を経験したあとだと、将来に女装する目を残していたい気はするのだ。特に高額報酬ならなおさらだ。とはいえ、母親の手前、女装したいと言える筈も無い。だから、いろいろと考える振りをして、勿体ないことを何度も強調したあげく
「劇団のアルバイトと思えば良いんじゃない? とりあえずは物置にでも置いといて」
という結論をだした。10万円はでかいのだ。きっと先輩は僕に頼む。彼女を作れる筈がないのだから。

もっとも、今は受験で忙しい。学校に行っても誰も僕の体型や顔の若干の変化なんか気にしない。声が少し高く柔らかくなったので、風邪ではないかと心配されている程度だ。もしかしたら変な視線を向ける女子がいるかも知れないが、僕はそれに付き合うほど暇ではない。

-------- 別バージョン ------------

2日後、無事にウイッグと偽乳ははずして貰い、顔も「もったいない」と言われつつ元通りにしてもらったのだが、コルセットは外れさずにいるし、それゆえにガードルも外せていない。正確には股間部だけ男に戻ったものの(女性器の部分からびりびりと破られた。あっけなかった)、他は戻していない。というのも、着付師から話を聞いた先輩が、3月にもう一度女装して欲しいから、目立たないところはそのままにしてほしいと言ってきたからだ。
「ここで外してゼロからやり直したら、次の報酬は5万円、そうでなければ15万円」
と言われたら僕も悩む。でも、ここは交渉だ。
「呼吸が苦しくて受験に失敗したらどうするんですか?」
と譲歩をもとめると
「え、まだ呼吸が苦しいの?」
と逆に質問された。確かに苦しくない。なれたのか?
交渉材料を出してしまった僕は反論で一気に不利になり、そのまま女性体型で家に帰った。

胸は無いし、男の股間だし、顔も髪も元の僕なので、母親も僕である事を正式に認めたけど、声が高いままなのはおかしく、低い声を出すようには努力中だ。でも、声帯だけでなく肋骨の骨格が女の子のそれで低い声が出せる筈も無く
「受験勉強疲れの長い風邪」
で回りには納得して貰っている。あと、受験生の体育は3学期はほとんどないので、全欠席で困らない。だから僕の体型がクラスメートにばれる筈はない。そう、その筈だ。回りがどんな怪訝な目で僕を見ていようとも。僕の美人顔を見ていようとも。

========== サイズ参照 ==========
日本の婦人服(標準体型:裸での値)
9号  83-64-91
11号 86-67-93
13号 89-73-95
米国の婦人服(標準体型:裸での値)
4  85-62-90
6  88-65-93
8  91-68-96
なので、本番の86-68-94は、日本の11号に相当し、翌朝の85-66-94、より尻の大きい米国基準サイズ6に相当する。


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